反トランプ運動、激化の兆し 米国のリーダーどう決まる?その9
Japan In-depth / 2016年3月14日 11時0分
大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)
「アメリカ本音通信」
暴言不動産王ドナルド・トランプが着々と各州で共和党大統領候補を決める予備選挙を勝ち抜き、夏の党大会で指名されることは免れないと、全米があきらめムードになったとたん、トランプはキャンペーンのギアを入れ替えた。冗談半分の泡沫候補ではないことを誇示するかのように。
10日に行われたディベートでは、今まで繰り返してきた対立候補との「お前の母ちゃんデベソ〜」レベルの言い争いはきっぱり止め、いかに自分のおかげで各地で登録した共和党有権者が増えたか、いかに11月の大統領選挙で自分ならヒラリー・クリントを倒せるかを滔々と語り始めたのである。
日本のマスコミでもトランプが得意げに「ラリー」と呼ばれる決起集会でスピーチをする様子は伝えられているが、これまではトランプの支持者が多い場所で開かれていた。さらに今までは、共和党の他の候補の支持者や、民主党の有権者は、まず自分が推薦する候補者の決起大会やタウンホールと呼ばれる小規模のミーティングに足を運んでいたわけで、わざわざトランプの支持者が集まるところには出かけて行かなかったのである。
ブルッキングス研究所がトランプ候補の支持者と相関関係のある有権者の特徴を調べた結果、高かった項目は「白人」「中卒」「祖先はアメリカ人と答える」「トレーラーハウス」「IT以外の仕事に従事」等だった。共通しているのは、この数十年で製造業からITを基盤にしたグローバル経済へ移行する波に乗り遅れた人たちだという。時代に取り残され、安定した生活が危ぶまれ、それが移民や難民のせいだと思い込み、やり場のない不安と怒りに苛まれたベビーブーマー次世代の人たちがトランプ支持の中心層なのだ。
だが、これからはそうはいかない。トランプ1人が候補となってしまえば、他の候補者を応援することは不可能になるし、他の合法的な手段も見当たらず、彼を大統領候補であることを阻止することはできなくなる。かといって、主流派の指導でこれまで反オバマ、反民主党、一切の妥協はしない方針を貫いてきた共和党では、トランプをなんとしても阻止するために敢えてヒラリー・クリントンに一票を投じる発想はない。第3党の候補を立てるには遅すぎるし、誰を立ててもヒラリーを勝たせることになるだけだ。
そして11日の夜、とうとうシカゴのイリノイ大学内の会場で予定されていたラリーで火蓋が切って落とされた。集まった反トランプの群衆の多さに怯んだトランプ陣営は「警察がこのままラリーをやっては危ない」と中止を勧めた、とウソをついて(警察はそのような進言は一切せず、十分な警備を配置する用意があったと発表している)、土壇場で姿を現すことさえせず、イベントを中止した。
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