「中東・欧州複合危機」の予兆
Japan In-depth / 2016年3月29日 12時0分
一体どうすれば、無差別テロを防ぎ根絶することができるのだろうか。ヨーロッパにおける中東出身者やイスラーム教徒の相対的貧困や社会的差別に原因を求める意見もある。とはいえ、すべての若者がみなテロに走るわけでは絶対ない。「貧困や差別を解決すればテロは消える」「関係者の対話で紛争を解決できる」という言葉は美しいが、具体的な説得力に乏しい。普通の市民階級に属する人がなぜ、現場に女性や子供がいても容赦なくテロ実行を躊躇しないテロリストに変容していったのか。そうした若者たちの心性を一般的に「ニヒリズム」(虚無主義)という観点から説明することはできる。それでも、「怒り」の生まれる社会的背景と個人の内的心理について、いま確定的な答えを持つことは難しいのだ。
一般に法を犯す行為とテロリズムは別種のものである。パリの大テロやブリュッセルの同時テロの実行犯はイスラーム信仰に格別熱心だった者とはいえず。むしろ、飲酒癖や遊興に熱心な反イスラーム道徳の徒さえ含まれていた。通常の法規範において反社会的な行為を繰り返す者たちがテロリストに変容する回路はまだ解明されていないのである。この点にヨーロッパにおけるテロ問題の深刻さがあると言うべきだろう。
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