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調査捕鯨に利益はない その理由

Japan In-depth / 2016年3月29日 23時0分

そして、オーストラリアは日本の経済・安全保障にとって重要な国である。

経済的にみれば、石油を除く一次資源の多くを頼っている。例えば安価で高品質の鉄鉱石や石炭、同様に安全安価な小麦や牛肉の供給元である。また、天然ガスの最大の輸出元となっている。オーストラリア近海には海底ガス田があり、対日輸出額ではマレーシア、カタールを抜いて第一位である。そのオーストラリアとの関係維持は日本経済の安定化のためには欠かすことはできない。

安全保障でも重要性は増すばかりである。

まずは、最も信頼できる同盟国となり得る国である。オーストラリアはアジア人南下に対する歴史的な恐怖がある。このため安全保障面では中国との対立も辞さない。その点では、アテにならないインドとは比べ物にならない。

また、マラッカ代替経路として有望なロンボク海峡外側を抑える国でもある。仮に南シナ海で日本が中国と衝突した際、日本向け商船の迂回路の安全を図る上で重要である。あるいは、中国向け商船のコントロールができる位置でもある。

さらに、インド洋に面する基地を貸してくれる可能性もある。仮にオーストラリア西岸に海自艦艇や航空機を配備し、マラッカ西口付近で行動させれば、中国に対しての相当の圧力となる。そして日中緊張時、中国に逆らって基地を貸してくれる国はジプチも含めて他にはない。

果たして、オーストラリアとの関係を悪化させるまでの価値が、調査捕鯨にあるのだろうか? 

 

■ 鯨肉は輸入できる

南氷洋調査捕鯨はやめたほうがよいということだ。

仮にやめたところで、鯨肉そのものの入手はできなくなるわけではない。鯨肉そのものはアイスランド、ノルウェーから輸入してもよい。両国は商業捕鯨を実施しており実際に対日輸出も実施している。さらに調査捕鯨では手に入らないナガスクジラも入手できる。

そのメリットは大きい。なによりも日本が「クジラを殺す」と恨まれることはない。特にオーストラリア人からすれば、自分たちの地先の南氷洋で取ったクジラではない。このため、さして怒るものではない。

あるいは、日本太平洋沿岸での捕鯨に切り替えるといった方法もある。日本の地先であれば、捕鯨に強硬な反対はない。調査捕鯨にせよ、各国政府が見逃してくれる程度の理屈をつけた非商業的な沿岸捕鯨にせよ、実現は不可能ではない。

調査捕鯨に利益はなく、それで起こされる不利益は大きい。そうみれば現状は一部の水産セクターの利益のために、国家の利益が毀損されている状況にある。鯨肉輸入なり、日本沿岸での捕鯨に切り替えるべきである。

注1) Japanese whaling program details prompts calls for Australian Government to take stronger action, ABC NEWS, (Sydney,ABC,2016.3.25) http://www.abc.net.au/news/2016-03-25/calls-for-australia-to-take-action-against-japanese-whalers/7276788

 

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