期待される「特別養子縁組」の普及
Japan In-depth / 2016年4月8日 23時0分
Japan In-depth 編集部 (Erika)
3日に引き続き、日本財団ビルで4月4日の「養子の日」にちなみ、「子どもが家庭で育つ社会をつくるシンポジウム」が開かれた。
第一部では、「子どもの家庭養育推進官民協議会」(以下、協議会)発足記者発表が行われた。協議会会長には、三重県知事の鈴木英敬氏、協議会副会長は全国里親会副会長の木ノ内博道氏がそれぞれ就任した。
協議会は、地方自治体の知事や市長といった「官」と、NPO法人や公益社団法人といった「民」の団体によって構成されている。官民が連携し、家庭養育を推進することを目的とする。具体的には、官民ネットワークの形成、里親制度や養子縁組の普及・啓発、研修の実施、政策提言というアクションを起こしていく。「子供第一主義」というマニフェストを掲げている浜松市長の鈴木康友氏や、実際にNPO活動を行っていたという奈良市長の仲川元庸氏など、一人一人の首長たちから挨拶がなされた。
参加民間団体の一つである認定NPO法人Living in Peace代表の慎泰俊氏は、「多くの子供にとって望ましい環境というのは、家庭に近い環境、家庭環境そのもの。」と話し、官民共同の協議会の発足に期待感を示した。
次に登壇した渡嘉敷奈緒美厚生労働副大臣は、子どもを家庭の中で育てるのがいかに大切か、里親の体験談の話を聞いて感じたと述べ、「この活動を厚生労働省を挙げてしっかりと応援していきたい。」と決意を語った。協議会会長の鈴木氏による設立宣言で、第一部は幕を閉じた。
第二部では特別養子縁組の今後について、児童相談所、民間養子縁組団体、専門家が参加してシンポジウムが開かれた。福岡市こども総合相談センター長の藤林武史氏による基調講演、その後、家庭養護促進協会大阪事務所の岩崎美枝子氏、日本女子大学教授林浩康氏の講演が行われた。
藤林氏は、里親委託の事業を進めてきたが、「パーマネンシ―(永続性)」の観点を意識し始め、特別養子縁組への取組を始めた。特別養子縁組にはまだ大きな課題が残っていると指摘。その中でも、年齢の高い子供の特別養子縁組をどうするかが、大きな問題だ。現在、特別養子縁組の制度には、6歳以下の子どもに限るという年齢制限が存在する。そのため、6歳以上の子どもは特別養子縁組が適用されず、児童相談所に残るケースが多い。それに対し藤林氏は、年齢制限の見直しを始めとする法改正を提言。現在、児童福祉法の改正が進んでいる。
続いて家庭養護促進協会の岩崎氏が講演。同協会は、「あなたの愛の手を運動」による児童相談所との協働を通して、官民連携を進めてきた。官民連携と言ってもよいところばかりではない。例えば、措置権をもつ公と、実働部隊となる民との関係性が上下関係になりがちである点や、個人情報保護法による情報共有の難しさなどの問題点を指摘した。
最後は、日本女子大学の林浩康氏。彼はデータを用いて養子縁組、児童相談所の現状と、課題を説明。また、「児童相談所は安心な機関か?」との疑問を呈した。民間養子あっせん団体、特別養子縁組の仲介団体は、あっせん法によって規制されているが、児童相談所は規制されていない。現在、林氏もかかわり、より厳格なガイドラインを作っているという。
国連の子どもの権利条約には、子どもは「家庭環境の下で幸福、愛着及び理解のある雰囲気の中で成長すべき」(前文)とある。乳幼児期に大人との愛着形成がなされないと、子どもの人格形成や成長に大きく影響してくる。罪のない子どもたち、声を上げることができない子どもたちを社会全体で育てたい、そんな気持ちが湧き起こるシンポジウムであった。
トップ画像:©︎Japan In-depth編集部
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
"いまがいちばんしあわせ" 家庭を味わってほしい・・・。里親の想い
KYTニュース / 2025年1月2日 14時0分
-
2/15(土)特別養子縁組当事者による全国フォーラムを開催!
PR TIMES / 2024年12月26日 17時45分
-
楽しい思い出を共有できるのが「家族」。 里子たちのおかげで喜びが拡大しています【里親が考える「家族」の意味】
OTONA SALONE / 2024年12月19日 21時0分
-
特別養子縁組当事者によるプチ・フォーラムを開催 イベントレポート
PR TIMES / 2024年12月16日 15時15分
-
ドミノ・ピザ、『クリスマスのための特別な「無料ピザで地域支援(R)」』支援先を決定 全国の児童養護施設、自立援助ホーム等1,600団体46,915人の子どもを対象に25,000個のピザBENTOを無料提供
PR TIMES / 2024年12月9日 12時15分
ランキング
-
180歳母親の口元に粘着テープを巻いて殺害しようとした疑い 56歳女を逮捕 「母に落ち着いてほしかっただけ」と一部否認
ABCニュース / 2025年1月2日 21時3分
-
2参院と都議に衆院も?石破首相は可能性否定せず…公明が夏の“トリプル選挙”に危機感「試練の巳年」
カナロコ by 神奈川新聞 / 2025年1月2日 18時50分
-
3羽田事故1年、なぜ最悪の事態免れたか 主脚無事で機体横転せず 乗客、乗員の指示に従う
産経ニュース / 2025年1月2日 18時45分
-
4皇居内トイレに落書き疑い=一般参賀中、男逮捕―皇宮警察
時事通信 / 2025年1月2日 16時12分
-
5週間天気予報 Uターンラッシュに寒気影響 仕事始めは広く雨の予想
ウェザーニュース / 2025年1月2日 15時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください