オスプレイ災害救済を疑問視 朝日新聞
Japan In-depth / 2016年4月20日 18時6分
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
熊本の大地震の被災者救援に米軍海兵隊の新鋭輸送機オスプレイが4月18日、出動した。ヘリコプターのように垂直に離着陸できて、双発機のように水平に長距離を飛べるこの輸送機は4月18日、熊本の被災地で水や食糧、毛布など合計20トンの物資を運んだ。
オスプレイといえば、かつて日米同盟強化に反対する勢力が日本国内への配備に激しく反対した輸送機である。その反対の先頭に立っていた朝日新聞は今回の災害支援でのオスプレイ出動にも奇妙な態度をみせた。4月19日の朝刊の記事では以下のようなことを述べたのだ。
「今回の救援活動に必要なのか。安全面に問題はないのか。疑問の声が出ている、日本政府と米軍はオスプレイの災害派遣での実績づくりを急いだ」
この米軍輸送機の出動を頭から人道救済以外の「実績づくり」というような政治意図だけに帰しているのだ。同じ記事は特定な政治家の以下のようなコメントをも紹介していた。
「オスプレイに対する国民の恐怖感をなくすために慣れてもらおうということで、こういう機会を利用しているとすれば、けしからんことだ」
この言葉は日本共産党の小池晃書記局長が朝日新聞記者に述べた意見だった。共産党は日米同盟自体に反対なのである。その政党代表が米軍機の利用にはなにがなんでも反対するのは当然ではないか。だが朝日新聞はその特別な意見を拡大して提示するのだ。
一方、産経新聞の記事によると、中谷元防衛相は以下の説明をした。
「オスプレイは山間部や孤立した避難所への物資、人員の輸送に非常に適している」
安倍晋三首相も「高い能力を生かした支援を期待できる」と述べていた。
確かにオスプレイは米軍従来の輸送ヘリCH46にくらべると、時速は520キロと272キロ、輸送要員は24人と12人、搭載量は5700キロと2300キロ、航続距離は3900キロと700キロと、すべて段違いの機能の高さである。
だが朝日新聞は社説などでオスプレイの日本配備とくに普天間基地への配備に一貫して強く反対してきた。その理由は「オスプレイの安全性に対する懸念」「 配備先の普天間基地でもしも事故が起きれば、日米同盟の基盤が不安定になる」「常駐基地が沖縄である必然性が薄れている」などとされてきた。
確かに海兵隊用のオスプレイの飛行時間10万時間あたりの事故率は1.93で、旧来の輸送ヘリCH46の1.11より高いという統計も明らかにされていた。
だがそれでもなおこれほどの高性能の輸送機がせっかく日本国内に配備されているのに、その緊急の人道支援への出動を「実績づくり」などと政治意図だけに帰する朝日新聞の論調にはなんとも説得力が欠けている。緊急事態の救援作業には利用できるものはなんでも利用するほうが普通だろう。戦争のための出動ではなく、現に苦しんでいる災害の被害者たちの救済なのである。
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