過去の震災から何も学んでいない日本
Japan In-depth / 2016年4月24日 15時0分
どこに行けば十分な物資がもらえるのか、今何が本当に足りないのか、どのルートがまだ開通しているのか、そして一時避難する場所もなく避難所で生活し続けなければならない場合、どうすればある程度清潔で人間らしい生活状態を保てるのか。愛する家族のため、困っている友人・隣人のため、そしてなによりも自分のために、何ができるのか。これこそ被災地での生活を余儀なくされている方々、そしてそこにいられない人々が思いを馳せることなのではないか。
SNS上では、地元に残る友人らが頻繁に「生き抜くため」の情報をながしている。炊き出しの場所や、粉ミルク、大人用オムツ、避難所では「贅沢品」とののしられる生理用品等の入手ルート。ある高校生はLINEと各避難所にいる友人の情報を駆使し、避難所全てで何が不足しているのかを一覧表にまとめて掲載していた。こうした避難所にいる若者の生き抜く力にただただ感嘆する一方で、生き埋め状態から救出された方へいきなり「ところで中はどうでした?」と取材するようなモラル感のかけらもない報道には辟易する。
川内原発停止に関する議論にしても、オンライン上のニュースしかこちらでアクセスできないからかもしれないが、事実の羅列だけで本当に停止すべきなのか否か、なぜそれが今できないのか、全うに分析している記事はほとんどない。福島の原発の惨事から日本のジャーナリズムの在り方については方々で批判されてきたが、こうしたジャーナリストの消極性は5年経っても変わらないようである。
おそらく熊本の人々は(そうであって欲しいという願いも込めて)、メディアが勝手に思い描いたストーリーの中で被害者化されるのを望んでいるわけではない。罹災申請をどうすればいいのか、被災地以外で被災者を受け入れてもらえる場所はないのか、授業を受けられなくなった15万人の児童の教育をどうすべきか。メディア報道の中で「被害者」化された人々は、すでに前を向きつつある。
福島から5年。何も変わらない政府の対応と報道のあり方を、今後の報道倫理規定の充実も含めてもう一度見直すべきではないか。
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