北朝鮮、5回目の核実験は? カギ握る中国
Japan In-depth / 2016年5月1日 11時0分
李受玟(イ・スミン/韓国大手経済誌記者)
北朝鮮の4回目の核実験からわずか100日ほど過ぎた今、東アジアでは5回目の核実験に対する憂慮が高まっている。これまで3年に一度ずつの核実験を行ってきた北朝鮮の過去の歴史を考えたら、異例のことかも知れないが、韓国政府はもちろん、米国や中国なども核実験に対して緊張を高めている。
しかし効果的な対北朝鮮への制裁に向け、力を合わせなければならない米国と中国は相変らずお互いの路線を主張したままで、核問題の解決は難航している。以前より強力な制裁を決議した国連安保理の決定が出た後も、独自外交路線に固執している金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国防委員会第1委員長が5月初めに5回目の核実験を敢行したら、絡まった北朝鮮の核問題がさらに複雑な状況になるという声も出ている。
北朝鮮は4月15日にムスダン級(射程3,000~4,000キロ)の中距離弾道ミサイル(IRBM)を初めて試験発射したのに続き、23日にはSLBMを発射した。ムスダンとSLBM発射は、どちらも失敗したと分析されたが、相次ぐミサイル発射で、北朝鮮が周辺の国に対する圧力を高めていることは明らかだ。
このような北朝鮮のミサイル発射攻勢は来月初めに党大会を控え、核・武力分野の実績作りを念頭に置いた正恩氏の指示に従ったという分析が、韓国のマスコミで繰り返し流れている。韓国統一部の官僚は最近、記者たちと会った席で「金正恩氏は中・短距離ミサイル発射などの挑発を強行し、核実験や長距離ミサイル発射を継続するという意志を表わしてきた。中・長距離ミサイル試験発射や追加の核実験などの挑発の可能性も排除できない状況だ」と話した。
北朝鮮の発言も5回目の核実験を予想する主張を後押ししている。 リ・スヨン北朝鮮外相は23日、AP通信とのインタビューで「朝鮮半島で核戦争演習を中止せよ。そうすれば私たちも核実験を中止する」と述べ、米国の対朝の敵対政策を指摘しながら核実験の正当性を強調した。4回目の核実験を実施する前にも北朝鮮は米朝の和平協定を要請し、韓米の連合軍事演習を中止すると主張したことがある。
米国はSLBM発射が確認されると、直ちに強力な圧力に乗り出す考えを明確にした。また、中国を狙ってより効果的な対北朝鮮制裁に力を合わせようと言及した。「北朝鮮が朝鮮半島の非核化について真剣に取り組めば、米国も緊張緩和のための対話に乗り出す準備ができている。まだ情報を分析中だが、北朝鮮が挑発的行動を継続しているのは明らかだ。私たちは北朝鮮に圧力をかけることができるように中国と協力関係を構築してきた。まだ希望するレベルではない。」 (4月24日、バラク・オバマ米大統領)
これに中国は憤った。制裁だけが能ではなく、米国こそ核問題解決に向けて何をしたのかという反論も続いた。「北朝鮮の弾道ミサイル問題は、国連安保理がすでに明確に規定した。(北朝鮮が)安保理決議を忠実に執行することを望んでいる。中国は、一様に制裁が万病に効く薬がないという点も認識している。私たちは米国が制裁の他に(北朝鮮の核解決のために)全力を尽くしたのか問いたい。」(4月25日、華春瑩中国外交部報道官)
このような米中の異なる見解は26日、ソウルで開かれた『峨山プルレノム2016』でも確かに見られた。国際外交の専門家たちの集まりであるこの行事に参加したロバート・アインホン元米国務省軍縮・非擴散担当特補は『中国責任論』を強調し、「北朝鮮には中国という支援者がいる。中国が北朝鮮体制を維持するという意思がある以上、北朝鮮を説得することは難しいだろう」と語った。彼は「(中国が)相当の圧力を北朝鮮に加えないなら、核を放棄することはないだろう」と説明した。
一方、中国を代表して講演した朱鋒中国南京の南シナ海研究センター所長は「制裁の局面下で中朝関係は過去とは違うが、中国は北朝鮮に原油を引き続き供給する」と述べ、「北朝鮮住民の生活が打撃を受けてはならないと思う」と中国の立場を説明した。同時に彼は米国の終末高高度防衛ミサイル防衛システムのサード(THAAD)の朝鮮半島配備に反対し、「安保を強化しなければならないが、配備によるマイナスの地政学的効果も注目しなければいけない」と言う。
結局、米国と中国の間に挟まれた韓国は非主導的な立場から対朝戦略を展開していく見通しだ。国際的な対北朝鮮制裁の戦線を拡大していくという外交戦略のもとに、韓米日3国に欧州連合(EU)程度を追加するというのがせめてもの昔とは違う部分だ。それで4月25日、韓国政府の高官は「国連安全保障理事会2270号決議は今年3月、初めて北朝鮮人権に対する言及をした決議だ。これは人権を重視する国が(北朝鮮に対する制裁を展開することに)良い根拠になるだろう。米国を含め、人権関連制裁を検討する国家が一部あり、欧州連合(EU)も適切な議論を経て、立場を決めることだ」と期待を込めた発言をしている。
しかし北朝鮮の住民の生活を懸念して援助をやめない中国が変わらない以上、国連や米国中心の制裁が北朝鮮に及ぼす影響は極めて小さいと予想されている。北朝鮮核問題を解決していく外交的なカギは過去も、今も、今後も中国が握っている。韓国と米国、日本が対朝問題について声を一つにし、中国を突き動かすことができるようになることを願っている。
(編集部追記)
北朝鮮は28日の朝と夜、新型中距離弾道ミサイル「ムスダン」を2回にわたって発射、いずれも直後に爆発し発射に失敗した。
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