災害報道の在り方見直せ
Japan In-depth / 2016年5月2日 15時10分
現地取材も、新聞なら熊本支局、テレビなら熊本ローカル局の支援で全国から記者やディレクター、リポーター、エンジニアらが押し寄せる。特にテレビの場合、同じ局なのに番組別にクルーが編成されるのが通常だ。これをまとめれば現地入りする人数はぐっと減る。大きな災害現場に全ての社、すべての番組のクルーが殺到することは二次災害を引き起こす可能性もある。映像をプール(1社が撮影し共有すること。代表取材)にしてもよい。検討に値するだろう。
ではなぜこうした単純な調整が出来ないのか?それはやはりマスコミ各社が「独自ネタ(スクープ)」を取ることを至上命題としており、熾烈な競争を繰り広げているからに他ならない。しかし、今マスコミを見る国民の眼は日増しに厳しくなっている。今のままでいいわけがない。メディアスクラムと呼ばれないような取材体制を敷くべきだ。
民放テレビ各社が自社の内部で調整出来ないのなら、各社が属している日本民間放送連盟(民放連)と言う組織で、「災害報道基本原則(仮名)」のようなものを策定するのも一案だろう。NHKも含めて協議し、災害時にどのような取材体制を敷くのか、決めておくのだ。年に1回開催している民放連の「記者研修会」で、SNS時代の災害報道のあるべき姿を徹底的に議論し、得られた知見を共有することも必要だろう。
先日、とある民放の夕方のニュースを見ていたら、現地から中継をしている番組のメインキャスターが、「私どもの取材が被災地の皆様に不愉快な思いをさせているなら心よりお詫び申し上げます」としながら、自分たちが取材した被災農家のニュースを見てボランティアが名乗りを上げた例を上げ、報道の意味を視聴者に訴えていた。現場の記者らは被災地で批判的な目をひしひしと感じているのかもしれない。
無論、災害報道には大きな意味がある。被災した人の情報や現状を一刻も知りたいという、県外の親族や友人のニーズもあろう。被災支援関連情報は、お金や物資を送るのに必要不可欠な情報だ。また、何故被害が拡大したのかの分析は今後訪れる災害への警告となりうる。
日本経済新聞の調べでは、54%近い人が普段から防災に対応していない、と回答した。災害はいつ何時わが身に降りかかってくるかわからない。マスコミには、継続して報道し、平時の備えを広く呼びかけ続ける責務がある。
まずは各社、社会の批判に謙虚に耳を傾け、虚心坦懐に取材手法を見直し、各社協力すべきところは協力し、切磋琢磨するところはそれぞれ頑張ればいい。どのような情報が読者や視聴者が必要としているのか、改めて見直し、時代に即した取材体制を敷くべきだろう。
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