三菱自「パジェロゲート事件」5つの違和感 その7
Japan In-depth / 2016年5月6日 7時0分
前回2000年代初頭に経営危機を迎えた三菱自動車、その時も三菱グループ内では、自動車を救済すべきかすべきではないのか、議論が紛糾したと聞く。それから10年強、時代は明らかに変わった。透明性、コンプライアンスの強化という面である。
機関投資家の行動はスチュワードシップコードというもので縛られるようになった。上場企業には、コーポレートガバナンスコードが導入された。社外取締役の任命が強制化された。ガバナンスコードは、各上場会社に、株主の権利が実質的に確保されるよう適切に対応し、株主がその権利を適切に行使することができる環境整備を行うことを求めている。
ただこれは三菱グループの金曜会(第2木曜日の昼飯会議)のような場で、極々内密で物事を決めるようなことがないように、というのが趣旨であって、大株主として、救済が是ならば救済するべき、ただそれだけのことである。
さて三菱自動車である。この会社の最大の強みはアジアとPHVである。世界100万台規模の販売台数のうち、日本は10万台、僅か10%で残りは海外、特にタイを中心としたアジアに強い。ここで利益を上げる収益構造に大きな影響が出ないのであれば、企業としての存続は可能との見方も出来る。
一方で、アジアは依然景気の低迷が続き、円高と合わせ、今期はなお販売・収益共に低迷するものと予想される。その中で前述のような損害賠償と販売減が同時に襲った場合、アジアでの強みを発揮できる前に、企業としての存続が危ぶまれる局面が出る可能性がある。損害賠償に耐えられるだけの、それも数年間に渡っての国内販売低迷という局面に於いても耐えられるだけの、金融機関からの支援があれば、何とかこの3万人企業は、首の皮一枚でつながるかもしれない。
ただ、この状態で残ったとしても、それが今後のビジネスモデルの最適モデルであるとは到底思えない。助ける助けない、ではない。生き残った後の最適なビジネスモデルを創出できるか否か、それが今回、生き残るべきかどうかを判断する最大の鍵であろう。
重工の自動車部門に戻るも有り、商事が自動車生産部門を持つのも一つのオプションであろう。私見だが、感情論で相川社長を退出させるべきではない。これからの再生のトップとしての責任を持たせるべきで、先代・先々代の責任を負わせるべきではない。処事光明に徹し、立業貿易・所期奉公の精神で再生させるべきである。
(本シリーズ、了。全7回、その1、その2、その3、その4、その5、その6も併せてお読みください)
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