深刻ではないトランプ氏の要求
Japan In-depth / 2016年5月6日 18時0分
■ 米軍は日本からいなくならない
もちろん中国との対峙からすれば、駐留米軍削減は好ましいものではない。例えば、仮に嘉手納から米海空軍がいなくなった場合、東シナ海正面での中国航空戦力とのバランスを崩す要素となる。これは対中対峙での不利となる。
だが、駐留米軍はいなければいないでどうにかなる。
日米安保は存続する。既述したとおり、トランプ氏は安保条約の破棄については言及していない。つまり、戦時や緊張状態となれば米航空戦力は日本に展開する体制は存続する。
そもそも、米軍は日本から出ることもできない。仮に駐留米軍が全部引き揚げとなったとしても、アジアで唯一高度な後方支援能力を持つ日本に依存せざるを得ない。
例えば、米海軍はアジア地域で展開するためには横須賀、佐世保、厚木(あるいは岩国)といった基地を必要とする。米海軍はその修理・補給能力に相当依存している。米原子力空母に最適化された専用岸壁は、アジアでは横須賀13号バースしかない。また軍港とペアになった弾薬庫も吾妻島(横須賀)や秋月(江田島)や、その弾薬集積を超えるものはない。
駐留米軍がいなくなったとしても、日本や周辺から米軍がいなくなるわけではない。
■ 節減により海空戦力増強も可能
あるいは、不要な駐留米軍削減は、日本海空戦力を増強する余地も生むかもしれない。
駐留米軍の選択的削減は、防衛予算の余裕を生む。具体的には駐留軍経費と基地対策費(そのうちの米軍分)が縮小するためだ。両者は現状で防衛費約5兆円のうちの1兆円程度を占めている。駐留米軍削減により余裕が生まれればそれを自衛隊に回すこともできる。仮に、これら経費のうち3000億円でも削減できれば、相当のことができる。
まずは、海空自衛隊を1割以上増強できる。中国との対峙は海自と空自によって行われている。両者とも予算規模は1.1兆円程度であるが、3000億の半分、1500億円づつを増額できれば予算規模は1割以上に増加する。それにより現状の海自140隻・170機、空自340機の戦力を海160隻・200機、空390機まで増強できる。
中国とのバランシングでみれば、あまり意味のない沖縄海兵隊等の駐留軍削減を補ってあまりある増強となるだろう。
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