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唐津・玄海コスメ構想 仏に負けない産業興す

Japan In-depth / 2016年5月10日 11時0分

唐津・玄海コスメ構想 仏に負けない産業興す

高瀬真由子(産経新聞 九州総局)

「Kyushu In-depth」

佐賀県唐津市と玄海町に化粧品の製造・輸出拠点をつくる「コスメティック構想」がある。

佐賀県と両市町は3月、大日本印刷と産業振興で連携する協定を結んだ。地元の薬用植物などを活用した商品を企画し、年内の発売を目指す。アジア市場を目指したコスメ構想が、じわりと具体化している。

「いよいよ、成果を出していく時期にきた」

唐津市の坂井俊之市長は3月7日、大日本印刷との締結式で、事業展開の意欲を語った。

佐賀県側と大日本印刷は、コスメ商品の共同開発に加え、市場展開へ連携する。具体的には、唐津や玄海エリアで開発された試作品を、同社のネットワークを生かして消費者に提案するという。

大日本印刷は、成長が見込まれる分野として、健康や美容に注目する。印刷で培った微細加工技術を応用した商品開発や、さまざまな媒体を使った広報宣伝などに参入している。

このなかで、佐賀県のコスメティック構想にも高い関心を抱き、連携が実現した。同社は唐津市内に社員を常駐させるという。常務執行役員の杉本登志樹氏は「自社のサービスを生かし、地方創生につなげたい」と語った。

唐津・玄海のコスメ構想は平成25年11月、官民挙げて化粧品産業の拠点を作る「ジャパン・コスメティックセンター」(JCC、唐津市)を設立したことで動き始めた。

きっかけは、世界有数の化粧品産業の集積地として知られるフランスの「コスメティックバレー」関係者が唐津市を訪れたことだった。アジアの市場拡大を背景に、仏側は日本で生産・流通拠点を探していた。コスメティックバレー名誉会長のアルバン・ミュラー氏が唐津・玄海地区に目を付けた。

構想実現へ、JCCは商談会や国際見本市へ積極的に参加する。昨年3月には、仏シャルトル市で、コスメティックバレーとの商談会を開催した。

同年10月、パリで開かれた国際的な化粧品展示会に、JCCの会員企業16社が出展し、有田焼や唐津焼でつくった陶器の容器や日本発の化粧品を展示した。この場でJCCは、コスメティックバレーと連携協定を締結し、企業誘致に弾みを付けた。

27年中にはこのほか、スペイン、イタリアの化粧品産業団体とも、市場創造を目指して協定を結んだ。

これらの活動は徐々に実を結ぶ。

今春、仏の化粧品原料会社「アルバン・ミュラー・インターナショナル」と、JCC会員企業の商社「マツモト交商」(東京)が、唐津市内に化粧品原料の開発に向けた合弁会社を設立する。

JCCの会員企業は、当初4社だったが、今では139社に上る。企業間の商談も活発になり、玄海町内で栽培した薬用植物が、横浜市の企業が手がける化粧品に使われることも決まった。

地元には現在、化粧品メーカー1社と、製品分析会社がある。JCCは今後、さらに企業誘致を進めて拠点性を向上させ、合わせて販売ルート開拓に注力する。今月中旬からイタリア・ボローニャで開かれる化粧品の展示会にも出席し、仏、スペイン、イタリアの団体と、今後の展開について協議するという。

玄海町の岸本英雄町長は「地方創生といわれながら、まだ地方が創生されている状況にない。国主導ではなく、地方主導で取り組まなければならない。九州の西の端に、フランスにも負けない産業を興せる街があることを示したい」と語った。

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