真田は「負け組のヒーロー」 ネオ階級社会と時代劇その1
Japan In-depth / 2016年5月10日 18時0分
昌幸は当初、幽閉生活はそう長くない、と考えていたらしい。家康の天下などそう簡単には確立せず、もう一波乱起きて自分の出番あれかし、と。
しかし、ご承知のようにそうはならず、昌幸は失意のうちに生涯を閉じる。
その後、大坂の陣において、信繁はまず勝ち目のない籠城策をとって敗死している。言ってみれば、負けっ放しの人生ではないか。そんな人物が、天下無双の名将として庶民のヒーローとなったのは、徳川の天下=幕藩体制が確立して、生まれながらの身分でおおむね人生が決まってしまう、という世の中になってきてからである。
福沢諭吉が、「封建制度は親の敵にてござそうろう」
と喝破したのは、だいぶ時代が下ってからの話だが、封建社会において「下流」と位置づけられた庶民の鬱屈は、かなり早い時期からたまっていたと見て間違いあるまい。
一方、徳川幕藩体制にあっては、一度は家康の命を危うくした(大坂夏の陣での本陣急襲)真田を英雄視するなど論外であった。
そこで、本名の信繁ではなく、幸村という、いわば架空のヒーローが活躍する「軍記物」が多数出回った、というわけだ。これなら「この物語はフィクションです」ということで見逃されたのだろうか。
とどのつまり、敗軍の将を英雄に祭り上げることで、勝者の顔も立てつつ「ガス抜き」ができたのでは、と私は考えている。
これは現在の日本社会にも通じる現象ではあるまいか、との問題を提起するのが、今次の連載のテーマである。
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