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マイナス金利、金融市場の理解不十分

Japan In-depth / 2016年5月15日 18時0分

その時の選択肢として、マイナス金利がベストかどうかというのはまた別の問題だ。この点については、「理」の論における評価も定まっていない。そもそも、あらゆる金融仲介に適用されるさまざまな金利が実質ベースですべてマイナスとなるような状況で、どういう均衡が実現するのだろうか。政策金利をマイナスにしたからといって、それですぐにそういう状況になるわけではないが、少なくとも「未知の均衡」へと舵を切ったという印象が残る。

他方、マイナス金利が期待通りの効果を生めば、デフレからの脱却がよりはっきりとし、経済活動も活性化する。そうなれば、マイナス金利政策からゼロ金利政策へ、さらには伝統的な金融政策へと回帰していくだろう。ということは、マイナス金利政策の向かう先は、今の舵のまま真っ直ぐというのではなく、どこかでUターンして戻ってくるようなものということになる。

今回のマイナスの政策金利の導入は、そのようなUターンが10年といった長い時間経過の中であれば当然起こると期待した上でのことであろう。しかし、現在の金融市場では10年物国債の流通利回りはマイナスである。これは、「今回の政策変更により日本経済がデフレから完全に脱却する」という将来像を、少なくとも今時点では金融市場が信じていないと解釈することもできよう。

「政」の策として、どのようなアクションをとるにせよ、あるいはアクションをとらないにせよ、為政者はその行為を市民に納得させてこそ政を為したことになる。金融政策は、マクロ経済において金融仲介を担う金融機関のために為されているものではない。最終的には家計部門の効用を最大化させるためというのが「理」の論の示すところだ。

しかし、現代の中央銀行は金融仲介のあり方に影響を及ぼすことでそれを実現しようとする。したがって、中央銀行のアクションについて金融機関・金融市場の理解・納得を得ることができなければ、金融の「政」の策を為すこともまた危うくなる。今回のマイナス金利については、現状、どうもそこのところがうまく行っているようにはみえない。

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