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オバマ広島訪問の真の意味

Japan In-depth / 2016年5月26日 9時25分

広島訪問は再選の大統領でしかできない。再選を控えた大統領にとって広島訪問はリスクが大きすぎる。そう考えると、オバマ大統領が今を逃すと、第二次世界大戦からの生存者がいるうちに、現職の大統領が広島訪問をすることはほぼ不可能になる。オバマ大統領は、核爆弾を唯一使った国として破壊的威力をきちんと目撃する責任がアメリカの大統領にはあると考えているのではないか。

冷戦の核競争も、冷戦以後の核拡散もすべては広島から始まっている。「私が生きているうちは不可能だと思うが、核廃絶を目指すべきだ」とチェコで演説した際には、すでにその最終目標として、広島訪問があったのであろう。

2つ目は中国と北朝鮮へのメッセージである。アメリカの国際政治関係者の多くは、中国と北朝鮮の核への抑止力として、広島訪問を説明する。現在、核拡散が心配される地域は、アジアと中東である。

オバマ大統領の日米同盟が良好である証と言えるが、安倍首相の得点であると言われるが、アメリカにとっても大きな得点である。アメリカは、核拡散に続くことになった過去の戦争と自ら区切りをつけることになるが、これは終わりではなく新しいアメリカへの始まりである。

自ずとアメリカの外交・安保はますます国土安全保障に重点を置くようになっていく。アメリカは、ついに国土が狙われる国になった。フランスの同時多発テロやベルギーの空港テロは今や他人ごとではない。冷戦時代のように世界の警察をする余裕はない。世界の平和と安定よりもアメリカの国土の安全保障に力を入れざるを得ない状況だ。

そのため、現在の大統領選挙を見ると、ISISに対して最も強い発言をするなど、アメリカ第一主義を主張するトランプが勢いを見せている。一方、アメリカは世界に関与すべきと考えるヒラリーは、伸び悩んでいる。

トランプは、日米同盟や米韓同盟はアメリカの負担が大き過ぎる、NATOは時代遅れであり撤退も選択肢になると、同盟国にとっては大暴言を繰り返すが、オバマ大統領も同盟国に対しては、ただ乗りの状況があると、批判している。アメリカの国土の安全とは直接関係がない外交・安保については、アメリカの負担を軽減したいという流れは確固として存在している。

世界の関与から国土安全保障へと重心が移ることは仕方がないかもしれないが、トランプのISISに対する強気な発言は、中東の核拡散を煽る可能性がある。国土に対して不安を感じれば感じるほどアメリカ人は強硬な手段を望むようになる。

広島訪問は、トランプとその支持者に対するけん制という意味合いも、案外、重要な要素としてあるのかもしれない。オバマ大統領は謝罪しないことは明白であるが、オバマ大統領の気持ちは、メッセージ、ふるまい、そして表情に凝縮されて現れるだろう。

トップ画像:everystockphoto /R i c h a r d

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