原爆教育と「赦す」という行為
Japan In-depth / 2016年6月7日 8時16分
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
私は祖母が広島で被曝をしているので、被曝3世というものになるらしい。東京に来ておばあちゃんが原爆にあってと話して驚かれたという経験をするまで、そんな意識をもったことすらなかったが。
祖母は生前あまり原爆にあった瞬間のことは語らなかったが、亡くなる数ヶ月前ぐらいからぽつぽつと話すようになった。友達と待ち合わせの場所に向かって歩いている途中に祖母は原爆にあったそうだ。少し同じ話を繰り返すようになっていた祖母は、あの待ち合わせの約束をしていた子はおそらくだめだったんじゃろう、不憫なことじゃというのを繰り返し話していた。
広島の小学校では必ず夏に原爆に関する教育がある。原爆ドームにも、資料館にもいく。なぜあんなことが起きたのか。起きた後一体どうなってしまったのか。広島に住んでいる以上そういうことを考える機会に必ず出会う。
原爆を忘れてはならないんだと言われて、そうなんだろうなと理解しながら、それでもどこかで一体いつまで私たちは原爆に関してこのような感情を持ち続けなければいけないのかとも思う。原爆を忘れてはならないという言葉には、あのことを許してはならないという意味は含まれていないのか。もしそうであれば許せないという状態にい続けることで、私たちは何かに縛られてはいないだろうか。縛られることで、失っているものはないのだろうか。
いかに悲惨で、信じられない出来事だったのかというのが小学生の時の原爆の教育であったように思う。私の小学生時代から数えても30年。そろそろ許すとはどういうことか。許しながら伝えていくにはどうすればいいか。そういうことを考え始めてもいいのではないか。訴え何かを変えたということは素晴らしいが、受け入れて許すということはもっと深く難しくチャレンジングなことだと思う。
祖母が死ぬ間際にしきりにもう一回でいいから思い切り走ってみたいと言っていた。さすが俺の祖母だと思ったのと、それから最後に思い出したのが走りたいであったことにほっとしたような救われる気持ちになった。
(為末大 HPより)
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