舛添騒動 炙り出された3つの意義 東京都長期ビジョンを読み解く!【特別編】
Japan In-depth / 2016年6月17日 11時0分
西村健(NPO法人日本公共利益研究所代表)
「西村健の地方自治ウォッチング」
舛添都知事が辞任した。
公私混同問題は、程度としては小さかったが(甘利氏の問題などと比較して)、疑問を持たれたときの対応がうまくできなかったこと(開き直ったように見え誠実さを感じられなかった)、そもそもの人間性への疑義が生じたことが大きかった。
これまで彼をスターダム、いや立身出世させてきたメディアでの発言が全て「テンツバ」(天に唾を吐く行為)であった点、政治的な支持基盤が相対的に弱かった点、海外出張や美術館視察などで垣間見れた「自己利益重視」の点、この2年でさした実績がない点などから、あっけないスピードで信頼を失った。
彼のこれまでの著書や発言を見れば、(石原元都知事の頃から続いていた)都知事の「KING」のような振る舞いに問題意識を感じて行動すると誰もが期待したはずだが・・・。期待への裏切りの強さが根本原因だろう。
今回の騒動、3点ほど意義があった。
1 舛添氏のように、弁が立ち・優秀な人だとしても、権力志向が強く、かなりのケチで・セコくて、人間性に多くの人が疑問を持つような人であっても、タレントとして成功でき、結果トップリーダーに選出されてしまうことのリスク。
2 他政治家も「舛添ルール」が適用されることに国民的合意が得られたこと。
3 都政や実績を考えるものさし(視点・尺度)が都民は持っていないが、新しいものさしを得たこと。
1についてであるが、今回は「タレント政治家」の最悪な事例・ケースであった。東京大学法学部を卒業して(大学院修士・博士課程をスキップして)直ぐに助手となる、学者の世界では「スーパーエリートコース」を歩んでいた優秀さは、メディアでの当意即妙な発言・発信力もあいまって、彼の人間性や本質を見る目を曇らせてしまった。
新卒で新入社員教育の洗礼を浴びることもなく、センテンススプリングなどの週刊誌が批判する以外は、舛添都知事が他人から愛のある批判を受けたり、自分で気づき・学び・改める機会はなかったのであろう。そして、メディアも厳しく問うてこなかった。選挙報道で、アメリカ大統領選挙のように人格について吟味ができない欠点が生んだリスクといえよう。
2は、「舛添ルール」に照らし合わせて、都道府県知事、首長たる人はそれ以下のレベルではあってはいけないことが明らかになった。舛添都知事以下のレベルの方が存在しないことを期待するのみである。まさか、いないとは思うが。
3は、東京都政が恵まれているため、一朝一夕には改善しない問題ではある。しかし、今回の舛添批判へは以下の点が追記されることになった。
・保育園や待機児童問題などに視察もせず、美術鑑賞や海外視察にいく
・お膝元の新宿での待機児童問題より都市外交・韓国人学校建設問題に執心する
などが明らかにした政策への関心や行動についてである。こうした政策に対する行動や態度、つまり優先順位である。
今度の都知事選の公約はどうせ曖昧な、漠然とした、抽象的な内容の応酬になる。行革は問われないだろうが、優先順位ということに気づいたことは大きい。
今回の騒動、いろいろな見方があるが、3つの意義があった。メディア、日本国の政治家や政党、都民のみなさんが考え、問い、都政に要求する役割を担っている。
市民社会を成熟させていくために、少しでも先に進めていく必要があること、自分ごととして感じていきたいものだ。
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