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キャメロン首相の大いなる誤算 英国はEUから離脱するか その5

Japan In-depth / 2016年6月22日 7時0分

それではどうして、キャメロン首相は,国民投票など決断したのか。

もともとEUとは、ヨーロッパが再び戦禍にさらされることのないよう、国家主権に一定の制限を加えることで、領土や資源をめぐる紛争を根絶しよう、という理念によって起ち上げられたものだ。

その詳しい経緯は、拙著『国が溶けて行く ヨーロッパ統合の真実』(電子版配信中)を是非ともご参照いただきたいが、大戦争に一度も負けたことがない英国には、大陸の官僚機構(EU委員会)が、意志決定機関として、700年の伝統を持つ英国議会の上位に立つなど我慢ならない、と考える政治家が、やはり多いのである。

加えて、英国保守党の内部事情があった。2010年の総選挙で、1997年以来の長期政権であった労働党を破ったものの、どの政党も過半数を取れない「ハング・パーラメント」の状況であった。

そこで、自由民主党(以下、自民党)との連立政権を組んだわけだが、英国の自民党というのは、旧自由党と、労働党を割って出た旧右派の社会民主党が大同団結して旗揚げしたもので、政策的には親EU色が強い。

しかし、2015年の総選挙(英国下院議員の任期は5年)では、例によって事前の世論調査の結果に反し、保守党が単独過半数を得た。

ここでキャメロン首相は、党内の反EU派を黙らせる「妙案」を思いついた。EUから離脱すべきか否かを国民投票にかける、という公約を打ち出したのである。

彼自身は、必ずしも親EU派ではないけれども、離脱すれば英国経済が大きな打撃を受けるということは、よく理解している。国民投票で、ちゃんと民意を問うた、という大義名分さえあれば、反EU派からの突き上げも少しは大人しくなる、という目論見だったのであろう。

ギリシャ危機、そして中東からの移民問題と、それに関わるテロリズムの脅威が、EU離脱派をここまで活気づかせるとは、想定外であったに違いない。

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