凶弾に倒れた政治家と日本のエコノミスト 英国はEUから離脱するか その6
Japan In-depth / 2016年6月22日 23時0分
残留派は「離脱でEU市場への自由なアクセスが難しくなり、輸出競争力が落ちて英国経済に大打撃だ」という。本当にそうか?離脱すれば、英国は「南欧諸国」のツケを払わなくて済む。さらには離脱で英ポンドが急落するならば、輸出競争力はかえって強まるのではないか?輸出の多寡は、値段すなわち為替が最大の決定要因だからだ。
なにを考えているのだろうか。まずこの人は、ギリシャ危機に際してのEUの救済策の具体的内容を知らないのではないか。あくまで、緊縮財政を「担保」とした融資に過ぎず、過去の政権による浪費のツケは、ギリシャの真面目な納税者や年金生活者が払うのである。
そのことを問題視するのではなく、離脱すればギリシャ問題から解放されると思い込むとは、なんとおめでたい、としか言いようがない。
後段はさらにひどい。英ポンドが急落すれば輸出競争力が増す?たしかに輸出価格は下がるかも知れぬが、関税の問題はどうなるのか。
格好の実例がある。今スペインやイタリアのホテルに泊まると、部屋のTVは大抵サムスンかLGだ。これは値段の問題、つまり日本円と韓国ウォンの為替だけの問題か?
正解は、もちろん、そうではない。韓国はEUとの間にFTA(自由貿易協定)を締結している。この結果、日本製の薄型TVには最大14%の関税が課せられるのに対し、韓国製は無税なのだ。逆の問題もある。英ポンドが急落するならば、所得の低い英国人が、中国製などの安価な輸入品を買いにくくなり、消費がますます冷え込む。
こうした現実があるからこそ、EU離脱派の勢いが増すと共に、早々とリスク回避目的でポンドやユーロが売られ、円が買われた。もちろん藤巻氏は、離脱派を支持するとまでは言っていない。単に、残留派の議論を「俗論」と斬って捨てることで、エコノミストとしての存在感を示したかったのだろう。
そうであるとすれば、日本人である私が、英国の有権者はセンチメンタルだなどと書いたこと自体、傲慢であったかも知れない。かくもレベルの低い議論を展開する人が、一流エコノミストと呼ばれ、参議院議員(おおさか維新の会)にもなり、日本を代表する週刊紙に経済コラムを連載できるのだから。
-
- 1
- 2
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
英国で政権交代が起きた理由(下) 「選挙の夏」も多種多様 その2
Japan In-depth / 2024年7月17日 11時0分
-
イギリス総選挙 政権交代しても、お先真っ暗な英国の未来
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月5日 16時20分
-
台頭する極右と高まる移民・難民排斥の機運、欧州はどこに向かうのか 専門家の見方は~青山学院大の羽場久美子名誉教授
47NEWS / 2024年7月4日 11時0分
-
日本車メーカーの「ドル箱市場」を中国EVが侵食…「世界一の自動車大国」の座を奪われた日本がやるべきこと
プレジデントオンライン / 2024年7月4日 7時15分
-
右傾化するヨーロッパと左傾化するイギリス
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月22日 16時0分
ランキング
-
1バイデン大統領、米大統領選からの撤退を表明 代わりの候補としてハリス副大統領を指名
日テレNEWS NNN / 2024年7月22日 3時30分
-
2党内からの「撤退圧力」強まるバイデン氏、進退の判断にはジル夫人らの意向が影響か
読売新聞 / 2024年7月21日 9時45分
-
3トランプ氏、右耳の傷は幅2センチ=元主治医が明かす
時事通信 / 2024年7月21日 14時26分
-
4《トランプ前大統領銃撃事件で使用》「全米で広く出回る」AR-15ライフル、日本の暴力団が「使わない」理由
NEWSポストセブン / 2024年7月21日 16時15分
-
5「トランプ氏なら終戦可能」 ジョンソン元英首相が寄稿
共同通信 / 2024年7月21日 22時45分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください