朝日新聞若宮啓文氏を悼む その3 竹島を韓国に譲って
Japan In-depth / 2016年6月23日 13時23分
第二の特徴は「論敵の悪魔化」である。最初に紹介した2006年3月の若宮コラムには以下のような記述があった。
≪現代の世界でも「発禁」や「ジャーナリスト殺害」のニュースが珍しくない。
しかし、では日本の言論はいま本当に自由なのか。そこには怪しい現実も横たわる。
靖国参拝に反対した経済人や天皇発言を報じた新聞社が、火炎ビンで脅かされる。加藤紘一氏に至っては実家が放火されてしまった。言論の封圧をねらう卑劣な脅しである。
気に入らない言論に一方的な非難や罵詈雑言を浴びせる風潮もある。この国にも言論の「不自由」は漂っている≫
以上の記述で問題なのは自分たちの主張に反対する側をすべて「火炎ビン」や「放火」でくくっている点である。テロ行為に結びつけるのだ。
だが実際には朝日新聞の主張に反対する主体は時の民主的かつ合法的な政権であり、自由な言論人や学者たちである。私自身も含めて若宮氏の主張への反対論を彼と同じ言論の自由の範疇で述べているだけなのだ。若宮氏の論敵たちもみな「火炎ビン」や「放火」を厳しく糾弾していたのだ。
だが若宮氏の筆法はその論敵をすべてテロリストに等しく扱ってしまっていたのである。この作業は悪魔ではない相手を悪魔扱いする「悪魔化」ということになる。若宮氏の「悪魔化」の手法は以下の記述にもうかがわれた。同じコラムからである。
≪(日本国民は)同胞の拉致の悲劇にはこれほど豊かに同情を寄せることができるのに、虐げられる北朝鮮民衆への思いは乏しい。ひるがえって日本による植民地時代の蛮行を問う声は「拉致問題と相殺するな」の一言で封じ込めようとする。日本もまた「敵に似てきている」とすれば、危険なことではないか≫
ここでの「敵」とはもちろん北朝鮮のことである。つまり日本が北朝鮮に似てきたというのだ。日本側が自国民の拉致問題の重要性を強調することは日本を北朝鮮に似た国家にする、というのだから、牽強付会の屁理屈である。日本国民が北朝鮮に拉致された同胞の救出を求めることがけしからん、それは日本の北朝鮮化だ、いうのだ。日本国民をそんな邪悪な存在に例えることこそ、日本の悪魔化だといえよう。
(その4につづく。その1、その2。全5回。毎日11:00に配信予定。この記事は雑誌月刊「WILL」2016年7月号からの転載です)
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