英国EU離脱で喜ぶ人たち
Japan In-depth / 2016年6月26日 12時35分
Ulala(ライター・ブロガー)
「フランス Ulala の視点」
欧州連合(EU)から離脱の是非を問う英国の国民投票が24日実施され、得票率は「離脱」が51.9%、「残留」が48.1%という結果がでた。この結果を受け、一時的に為替や株価に大きな影響がでるなど、24日は世界的に大混乱な一日となったのだ。
フランスのメディアFrance Infoによると、EU内で一番影響を受けるのはフランスだろうと言われている。フランスは乳製品をはじめ農作物を多く英国へ輸出している。またフランスを訪れる観光客は、英国はドイツに次ぐ数であるが、EU離脱を経て国境の行き来が現在のように自由ではなくなると、大幅に観光客が減少するリスクがあるという。
しかしながらそれよりも心配なのは、これを機に起こる反EU、移民排斥を掲げるナショナリズムの拡大だろう。すでに、フランスの極右政党、国民戦線(FN)のルペン党首はツイッターで、英国のEU離脱を「自由の勝利」だと歓迎し、フランスでもEU離脱の是非を問う国民投票を実施すべきだと声を上げている。フランスは来年、大統領選挙も控えており、テロ後に行われた選挙では、FNが大きく躍進した経緯もある。
だいたい国民投票は危うい。今まで政治判断を代表者にゆだねていた国民が、十分な知識がないままに感情や直感で投票する。その結果が今回の離脱派の勝利ではないだろうか。経済悪化によって高まった不満は、目につきやすい移民に向けられやすく、間近に目にする身に迫った問題であり感情論になりやすいのだ。
だが、元々EUが結束した一番の大きな理由は「平和」ではないだろうか。ヨーロッパ諸国は二度に渡る世界大戦の反省から、ヨーロッパ地域の国が丸ごと一体となって戦争を防ぐという目的を持っており、実際、EUが出来てから欧州の大国間で大規模な衝突は起きておらず、良くも悪くも平和な状態が続いていたのだ。
ゆえに結束が崩れるということは、再びヨーロッパが動乱の時代に戻るリスクが有るということでもある。フランスでも、庶民の間では「英国がEUから出て行った方がフランスには有利になる」と言う意見を言う人もおり、自分の国さえよければいいと言う考えが横行している現在の状況は、戦前と酷似していると危惧する専門家もいる。
今後のEUの結束は、フランスとドイツの動きが大きな鍵となることは間違いないだろう。すでにオランド大統領は、「イニシアティブをとる」と述べており、EU加盟国の首脳陣は、影響を最小限に食い止めるためにも、英国の「なるべく速やかな」離脱を促す共同声明を発表している。
-
-
- 1
- 2
-
この記事に関連するニュース
-
パリ五輪は無事に開催されるのか…「都知事選以上の大番狂わせ」が起きたフランス総選挙のカオスぶり
プレジデントオンライン / 2024年7月15日 10時15分
-
仏総選挙、極右失速に欧州安堵 宙づり議会で前途多難
ロイター / 2024年7月9日 8時56分
-
台頭する極右と高まる移民・難民排斥の機運、欧州はどこに向かうのか 専門家の見方は~青山学院大の羽場久美子名誉教授
47NEWS / 2024年7月4日 11時0分
-
日本車メーカーの「ドル箱市場」を中国EVが侵食…「世界一の自動車大国」の座を奪われた日本がやるべきこと
プレジデントオンライン / 2024年7月4日 7時15分
-
反移民感情と民主主義のバランスが崩壊したフランスの教訓...人口移動は今後「さらに加速する」
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月2日 17時37分
ランキング
-
1バイデン大統領、米大統領選からの撤退を表明 代わりの候補としてハリス副大統領を指名
日テレNEWS NNN / 2024年7月22日 3時30分
-
2党内からの「撤退圧力」強まるバイデン氏、進退の判断にはジル夫人らの意向が影響か
読売新聞 / 2024年7月21日 9時45分
-
3《トランプ前大統領銃撃事件で使用》「全米で広く出回る」AR-15ライフル、日本の暴力団が「使わない」理由
NEWSポストセブン / 2024年7月21日 16時15分
-
4大統領警護隊、警備強化を拒否 トランプ氏側が複数回要請
共同通信 / 2024年7月22日 0時36分
-
5「トランプ氏なら終戦可能」 ジョンソン元英首相が寄稿
共同通信 / 2024年7月21日 22時45分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)