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メイ新首相のお手並み拝見 EU離脱・英国の未来像 その4

Japan In-depth / 2016年7月15日 12時0分

2010年の総選挙で、労働党が敗れて野に下ったわけだが、勝利した保守党も単独過半数を確保できず、世に言うハング・パーラメント(hung parliament)の状況であった。そこで、自由民主党を取り込んで連立政権となったわけだが、この過程で、任期一杯の5年間は解散しない、との密約がまず交わされ、それを具現化すべく法案が成立したものと、衆目が一致している。


とどのつまり、現在もっとも理解しやすいシナリオは、こうだ。メイ新首相は、国民投票の結果を尊重するという大義名分のもと、EUとの離脱交渉に望むが、同時に、離脱の通告は「年内は行わない」と明言している。


2017年のある時期に、離脱を通告した場合、リスボン条約の規定により、その日から2年以内に新たな条件について交渉がまとまらなければ、自動的に加盟国たる権利が失われる。


そうであれば、「一定の人的移動の自由(具体的には移民の受け容れ)と引き換えに、EUの単一市場へのアクセス権を得る」という交渉を続けるうちに、2019年を迎える。ここで、ひとまず離脱となり、国民投票の結果を尊重するという公約は果たされる。


すると自動的に、2020年の総選挙は、「本当に離脱してよかったのか。再加盟の余地はないのか」というのが最大の争点になるであろう。再度の国民投票などしなくても、これなら同じ事ではないか。


もちろんこれは、EUとの交渉が、万事英国の思惑に沿って進められる、という前提で描かれているシナリオで、そうは問屋が卸さない、と見る向きも多い。しかしながら、EUもまた、経済的・政策的な行き詰まりに直面し、変化を余儀なくされるとの前提に立てば、あながち荒唐無稽とも言えないと私は思う。


風見鶏よろしく残留派についたり離脱派についたりした挙げ句、英国を奈落の底に突き落とした戦犯となるか、英国議会政治史上最大の難局を乗り切り、マーガレット・サッチャーをもしのぐ女傑として歴史に名をとどめるか。メイ新首相の、明日はどっちだ。

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