“刺激”を求めていくメディアの性
Japan In-depth / 2016年7月20日 11時30分
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
前に芸人さんと、それから構成作家さんという職業の人と中華を食べに行った時に、麻婆豆腐と担々麺を頼んだはずなのに、回鍋肉とスーラータン麺が出てきたことがあって、頼んだのと違いますよと僕が言おうとしたら、二人は嬉々として”これはおもろい、ネタになる”と興奮していたということがあった。なるほどこの職業の人たちはこういう捉え方をするのだと勉強になった。
一方で、彼らも辛いことがあると話してくれた。番組に出るたび、舞台に立つたび、毎回面白いこと、人目を引くことを言わなければいけないのに、そんなに人生で面白いことばっかりが起きるわけがない。大御所になれば別なのかもしれないが、若手のうちはとにかくチャンスが来た時に面白いエピソードを言えることが大事で、そのネタを探すのに毎日必死で面白いことを探さないといけないと言っていた。そうなるとそのうちに小さなネタなのだけれど、上手に”盛って”面白いことに仕立てていくという手法を学ぶのだという。
私がこの時感じたのは、たまたま体験したものを自分の好きな時に話していい素人と違い、プロの世界は定期的に安定的にパフォーマンスを発揮する必要があるということだ。最近、同じことをメディアという業種にも感じる。つまり世の中にインパクトのあることがばんばん起きるわけではない中で、毎日、または毎週、発行や放送しなければならない構造上の難しさがあるのではないかと思う。芸人さんは自分で話を作っても誰も検証しないが、メディアは当たり前だけれど厳しくそれを追求される。
世の中は刺激になれる。前以上の刺激を求め続ければどんどん過激になっていく。9/11のあとに、不謹慎な話しだけれど、これから先何をやっても映像的なインパクトはあれに勝てないだろうなと話しているメディアの方がいたが、それもわかる気がする。本当は他愛のない日も、刺激的な日も両方をみんなが楽しめればいいけれど、人間はそういう風にはできていないのだろう。三浦梅園の言葉がふと頭に浮かぶ。
枯れ木に花咲くを驚くより、生木に花咲くを驚け 三浦梅園
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
幸せになりたいなら今すぐやめよう!毎日が充実しない5つの危険な考え方
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月15日 11時0分
-
『地球の歩き方』と『ムー』が異色のコラボ。予想以上の反響も、いったい誰が買っているのか…編集長を直撃
日刊SPA! / 2024年7月10日 8時51分
-
「休日は何をしているんですか?」にバカ正直に答えてはいけない…センスのいい人が自然とやっている返し方
プレジデントオンライン / 2024年7月7日 8時15分
-
「人生が行きかう交差点に立って」結城真一郎×TAIGA『難問の多い料理店』
集英社オンライン / 2024年7月6日 14時0分
-
『N』は今まで自分が書いてきた中で一番の、究極の「体験型」小説かもしれません『N』道尾秀介
集英社オンライン / 2024年6月30日 10時0分
ランキング
-
1【体操】宮田笙子のパリ五輪出場辞退 ダルビッシュ有との〝比較論〟が脚光「無期限謹慎を食らった」
東スポWEB / 2024年7月21日 18時17分
-
2ハム清宮が2打席連続アーチ 衝撃の4安打に新庄監督は拍手…止まらぬ打棒に敵地騒然
Full-Count / 2024年7月21日 20時9分
-
3「とにかく球団が怒っている」大谷翔平の“激怒”でフジテレビ局内は「自粛ムード」に
文春オンライン / 2024年7月21日 7時0分
-
4大谷“唯一の弱点”なのに「これは危険」と発言するワケ 200勝右腕が指摘した敵投手のジレンマ
THE ANSWER / 2024年7月21日 18時3分
-
5西武が前半戦最終戦で自力CS進出消滅…9回完投の隅田援護できず0―1負け 27勝59敗1分け借金32
スポニチアネックス / 2024年7月21日 19時38分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)