一触即発の大乱危機
Japan In-depth / 2016年7月20日 18時58分
少なくとも2000年代までは自由な市場主義、各国の主権と人権の尊重、力の支配に対する批判、国際的平等などに対して共通の尊重があった。ところが、ここ1-2年でそうした常識、規範が一挙に崩れてきたのではないか。どの国も自国優先主義になり他国との国際協調は二の次になってきた。それをあからさまにムキ出しているのが最近の中国の姿であるようにみえる。
問題はこれからの日本の出方だ。裁判所の判決を楯に中国を攻め立てても解決しそうにないし、再び日中関係をこじらせる結果に発展しかねない。まずは中国の狙いが、本当にアジア太平洋進出の軍事拠点の一つにしようとしているのか、それとも漁業や海底資源の獲得にあるのか、あるいはASEANの分断化を考えているのか。日本はまず政府レベルだけでなく、ASEAN諸国や民間レベルなどあらゆるルートから中国を話合いのテーブルにつかせるような努力をし、そのことを世界にみせるべきだろう。その上で中国の本音を知って解決への道を探ることだ。
中国は上り調子の国だが、まだ成熟した国になっているとは言い難い。世界が安定的に成長してゆくには、国際社会が認める国際的な価値基準を尊重すべきことをみんなで説くしかあるまい。世界大乱のきっかけが南シナ海問題から発することだけは、何としても避けるようにするのが日本の役割であり、その覚悟を持つべきだろう。
*九段線
中国が南シナ海に九つの破線をU字形に描き、その内側は自らの主権が及ぶと主張する境界線。1947年に国民政府が引いた「十一段線」を中華人民共和国(中国)が踏襲し「九段線」に変更。
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