謝れない、黙っていられないトランプは大統領になれるのか? 米国のリーダーどう決まる?その22
Japan In-depth / 2016年8月3日 23時21分
大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)
「アメリカ本音通信」
共和党、民主党ともに4日間に渡る党大会を終えて、11月8日の本選に向けた100日間の戦いが始まった。大統領候補は誰しもが、党大会を締めくくる指名受諾演説を終えると、次の世論調査では知名度や好感度が上がるのが普通だ。共和党大会が終わった時点で拮抗していたドナルド・トランプとヒラリー・クリントンの支持率だが、民主党大会の後、元どおりクリントンが7%上回る数字を取り返している。
もっぱらの話題は、民主党大会に招待されて壇上に上がった無名のイスラム教徒夫妻に対するトランプの対応が、あまりにも大統領の器とは思えないという批判をされ、その嵐がなかなか収まらないことだ。人種差別や社会的弱者に対するこれまで数々の暴言にもかかわらず、それでもトランプを擁立して民主党に勝とうという共和党は見て見ぬ振りをしてきたが、今回の騒動は違った趣を見せている。
ことの発端は、クリントンが遊説中に知り合ったパキスタン系移民夫婦の息子がイラクで戦死し、彼らの犠牲こそがアメリカという国を体現していると考え、民主党大会で数多の有名人に混じって、このカーン夫妻にスピーチをしてもらったことだ。キジアとガザーラのカーン夫妻の次男、フマユン・カーンは、父親と同じ弁護士を目指していたものの、在学中に米軍の訓練を受け、9-11のテロの後、自らイラク戦争に志願して戦場に赴いた。2004年6月8日朝、バグダッド米軍基地に1台のタクシーが近づいた。基地の警備に当たっていたカーン大尉は他の兵士に伏せるよう命じ、自ら車に近づいたところで車が爆破、彼は27歳で戦死、パープルハート(名誉戦死傷章)兵士としてアーリントン墓地に眠っている。イスラム国のテロ対策として、イスラム教徒移民の当面禁止やテロリストの家族勾留などを政策として掲げるトランプに対し、彼の父親、キジア氏は民主党大会の演説でこうぶち上げた。
「お前は米国憲法を読んだことはあるのか?」「私のコピーを貸してやるから『自由』『法の下の平等』という言葉に注意して読んでみろ」「アーリントン戦没者墓地には、すべての信仰、性別、民族出身の愛国者たちが眠っている」「お前はアメリカのために何も、誰をも犠牲にしたことはないだろう」
アメリカでは戦没者遺族は「ゴールドスター」ファミリーと呼ばれ、誰もが敬意を払う。しかしトランプはTVのインタビューに対し、妻のガザーラさんが発言しなかったのはイスラム教では女性が発言できないからだと言外に示唆し(後日彼女は、息子フマユンの写真がそこにあるだけで今も泣けてくるので、夫のスピーチを一緒に推敲したと発言している)、自分も高層ビルや娯楽施設を建てるために犠牲を支払ってきたと放言。朝鮮戦争で捕虜となった経験を持つジョン・マケイン上院議員や、民主党の面々だけでなく、これまでどうにかトランプ支持を打ち出してきた共和党幹部らが、その立場を貫けるのか、注目が集まっている。
同じTVインタビューで、トランプは「ロシアはウクライナに侵攻していない」などとクリミア半島併合を全く理解していない一面もうかがわせた。トランプはこれまで、EUをバカにする一方、プーチン大統領をおだて上げ、ロシア寄りの外交を匂わせているが、これも外交知識がなせる技ではない。国内ではもうトランプの不動産買収や開発計画にお金を出す銀行はなく、ロシアの新興財閥に頼っているからだ。トランプが自らの納税記録を公開しないのは、このことも一因とされている。さらに、これ以上しゃべると無知がバレると思うのか、今は何かと理由をつけてクリントンとのディベートから逃げ回っている状態だ。
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