天皇自身による「第2の人間宣言」 知られざる「王者の退位」その4
Japan In-depth / 2016年8月23日 11時0分
しかしながら、議論が充分に尽くされたとは言い難い中で、拙速に「戦後民主主義」と呼ばれる新たな国体が作り上げられてしまったことは、遺憾ながら事実である。
この結果なにが起きたかと言うと、新たな憲法は制定されたが、明治初期に制定された皇室典範については、事実上、手つかずで残された。端的な例を挙げれば、日本国憲法では男女平等が明確に謳われているが、皇室典範では今でも女性の皇位相続権は認められていない。小泉内閣当時、皇室に40年間男児が誕生しない、という事態を受けて、女性天皇の可能性も議論の的となったが、その矢先、秋篠宮家の男児誕生であっという間に忘れ去られてしまった観がある。
今次の問題も、立花隆氏が『文藝春秋』9月号で明確に述べているとおり、象徴という、言葉本来の意味からすれば実態のない責務を、生身の人間に背負わせるという、制度そのものの矛盾がまず問題なのだ。
もうひとつ、より重要な問題は、天皇自身が「個人」という言葉を用いたことにより、
「摂政を冊立して、皇室典範の規定だけは遵守しないと、国体の危機につながる」
といった、保守派・改憲派の目論見が崩れたことである。
念のため述べておけば、リベラルな憲法学者の中にも、天皇自ら「個人」という言葉を用いたことに、危惧を示す向きがないわけではない。
私自身は、日本国憲法についてはニュートラルな立場であると自負しているので、変えるべき箇所は変えればよい、と公言している。しかし、現在の改憲勢力の基軸、より具体的には、自民党が野党時代に取りまとめた、天皇の元首化や新たな国軍の創設を軸とする憲法改正草案には、明確に反対である。
とりわけ前者については、天皇自身の意に反するものであることが、文字通り満天下に明らかになったと言える。
もう一度言う。安倍首相は、この議論から逃げてはならぬ。
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