米中戦争は起こりうる その1 なぜ戦いが始まるのか
Japan In-depth / 2016年8月26日 18時0分
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
アメリカと中国は戦争に突入しうる!
こんなショッキングな研究結果がアメリカでも最有力の安全保障研究機関「ランド研究所」から公表された。しかもその米中戦争では日本の動向が枢要のカギとなる、というのだ。こんな衝撃の予測を日本の大手マスコミはまだ報じていない。いまここでその内容を伝えよう。アメリカの首都ワシントンで取材活動にあたるジャーナリストとしてこの予測の報道は義務とも思える日本への重要な警鐘だからである。戦争は防ぐためにこそ、その可能性の現実を知っておく必要があるのだともいえる。
報告書のタイトルは「中国との戦争」と、まさにずばりの表題である。しかも副題には「考えられないことを考える」と記されていた。米中戦争なんて、と顔をそむける向きにはぜひとも知ってほしい報告書なのである。なぜなら米中戦争という事態はわが日本の存続そのものを左右するからだ。
この報告書はランド研究所がアメリカ陸軍当局から委託されて作成した。膨大なデータを駆使し、最高級の専門家集団の知力と体験をインプットして、調査、分析、予測に長時間をかけてこの7月末に作成を終えた報告書である。最終完成品としては約120ページのレポートとなった。こんご2025年までの状況の予測だった。
さてなぜ米中戦争が起きうるのか。そもそもアメリカも中国も核兵器の保有国ではないか。非核の通常戦力もともに強大な規模を保持する。しかも米中両国は経済面では相互依存の関係にもある。万が一にも全面戦争となれば、両国にとっての破壊や損失は測りしれない。そんな危険がわかっている両国が戦争をするはずがないではないか。こんな考えは常識のようにも思える。ところがその「常識」にも穴があるというのだ。
その米中戦争の可能性について報告書は次のように述べていた。「米中両国は軍事的な対決や衝突につながりうる地域紛争での対立案件を抱えている。そしてそれら地域周辺に両国とも大規模な軍事力を配備している。このため偶発的な衝突や危機が深くなった際には、両国いずれにとっても、攻撃される前に攻撃に出ることへの動機が強く存在する。現実に両国は陸海空、宇宙、サイバー空間などの広大な領域で戦闘をするのに必要な兵力、技術、工業力、要員を十分に保有しているのだ。だから米中戦争は大規模で代償の大きい戦闘も含めて、単に『考えられる』というだけでなく、実際の思考が必要な可能性なのだ」
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