ダイアナ元妃の悲劇の本質 知られざる王者の退位その7
Japan In-depth / 2016年9月1日 11時0分
同時に、宮殿に半旗を掲げず、スコットランドの避暑地から動こうとしなかった女王夫妻らに対して、非難の声が巻き起こったのだ。実際にインタビューに対して、「このような冷酷な王家を、税金で維持する意味があるのか」と語った人もいた。生前退位をめぐる議論どころの騒ぎではない。
ダイアナに対する同情ももちろんあったが、それ以上に、王室の伝統文化といったものが、もはや国民に理解されていない、という問題であった。
まず第一に、私が一貫して元妃と記していることからもお分かりのように、この時点でダイアナはチャールズ皇太子と離婚しており(1992年より別居、96年に離婚)、とっくに王室の一員ではなくなっていた。女王がどうして、一私人たる女性の事故死に際して、涙を見せねばならないのか、ということになるーー王室の側の論理では。
しかし国民は、そのようには理解しなかった。
そもそも離婚の原因がチャールズ皇太子の不倫(相手は現在のカミラ夫人)にあったこともよく知られていたし、英国民はダイアナを依然として「悲劇のプリンセス」と見なす一方、女王のことを、死んだ後までも嫁に対して冷酷な姑、と言わんばかりに非難の対象としたのだ。これではまるでホームドラマだが、今や王家は、そのような形でしか、関心の対象となっていないのである。
現在、英国王室は、世界的な人気を誇るサッカークラブであるマンチェスター・ユナイテッドの広報担当者だった人物をヘッドハンティングし、語弊を恐れず言えば「人気取り」にこれ務めている。女王の衣装デザイナーも、チームが一新された。
一方、事故現場に駆けつけた消防士の証言によれば、ダイアナの最後の言葉は「Leave me alone. 放っておいて」であったという。彼女の本当の悲劇とは、常に好奇の目にさらされる立場であったこと、それ自体であったに違いない。そして、エリザベス2世女王もまた。
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