山下奉文将軍とフィリピン 降伏した山中で出会った人々
Japan In-depth / 2016年9月2日 18時0分
さらに「戦争は二度とするべきではない、フィリピンと日本はこれからたとえば気象問題などのグル―バルな問題の解決に一緒に取り組むべきだ」と話した。また別の元兵士は「日本、日本人を戦争当時は憎んだ。しかし今は平和の時代、日本人とは仲良くやっていきたい」と笑顔で日本人だと名乗った筆者に握手を求めた。
キアンガンで農業を営む89歳になるダニエル・グアディ氏は「挨拶をしなかったというだけで殴られたので当時村にいた日本兵は怖かった。山に逃げ夜になると食料を探しに村に降りるという生活を続けていた。山下が降伏したと聞き、走って山から村の家に帰ったのを覚えている」と話す。日本語で「おはようございます」とあいさつし、「見よ東海の空明けて」と「父よあなたは強かった」という軍歌を日本語で歌った。9月2日は「とてもうれしい日だ」と目を細めた。
記念式典でイフガオ州選出の国会議員、テオドロ・バギラット氏は「9月2日は単にフィリピンだけではなく世界にとって忘れられない平和と解放の日で、この日をもって第2次世界大戦という人類にとって暗黒の時代が終わったのだ。生き抜いた人々にとって、私たちにとっても忘れてはならない日である」とスピーチ、大きな拍手を浴びた。
■恩讐を超えた友好ムード
広場を取り囲む山並みの上に広がる澄み渡った青空から降り注ぐ南国の太陽を浴びて、式典会場にはフィリピン、米国の国旗とともに日の丸も振られ、恩讐を超えた友好ムードが流れていた。キアンガンで宿泊施設を経営するアンドリュー氏は「9月1日は遺骨収集や日本兵の慰霊に日本の団体が来ていたが帰ってしまったようで、2日の式典には参加していない。ここまで来たのだから、なぜ式典に参加して元フィリピン軍兵士と親交を深めるなどフィリピンの人たちと交流をしないのだろうか」と話し、残念そうな表情を見せた。
マニラを撤退した山下将軍が一時本拠を置いた山間部の避暑地バギオ市内には「英霊追悼碑」がある。バギオ在住の日系フィリピン人団体「アボン」から委託を受けた74歳のリカルド・エンリケスさんが寝泊まりして管理している。月7000ペソ(約2万6千円)の手当てですでに20年間この仕事をしている。終戦時は4歳だが、銃を持った日本兵の記憶だけはあると話す。こうした日本人、日本の部隊が建立した記念碑、追悼碑がフィリピン各地には多く存在するが、こうした場所を訪れ、慰霊する日本人の個人、団体の多くは「戦った相手は米軍」との認識が強く、「米軍と共に戦ったフィリピン軍兵士、フィリピン人ゲリラ、そして一般のフィリピン人への贖罪や謝罪の気持ちを表す日本人は極めて少ない。戦場となったこの地はフィリピンの土地なのに」とイフガオ州出身のフィリピン人哲学者、アル・クイさんはフィリピンと日本の複雑な関係を指摘する。
■歴史と謙虚に向き合うこととは
第2次世界大戦の戦場となった東南アジアの中でも特に反日感情が根強い激戦地のフィリピン。それはゲリラ掃討と称して日本軍が組織的にフィリピン人を多数殺害した記憶が語り伝えられ、さらにその事実を日本人があまりにも知らない結果でもある。「日本人はもっと歴史の事実に謙虚に向き合って欲しい」と多くのフィリピン人は願っている。
今年1月27日にフィリピンを訪問した天皇皇后両陛下は日本人戦没者だけではなく、フィリピンの英雄墓地を訪れ無名戦士の墓でも慰霊の祈りを捧げた。戦時中フィリピンでは日本兵約51万人が戦死しているが、フィリピン人は110万人が命を落としている。そのことに特に心を寄せた天皇皇后両陛下の強い希望で実現した無名戦士の墓での慰霊だったという。
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