水泳の記録が伸び続ける秘密
Japan In-depth / 2016年9月5日 7時40分
為末大(スポーツコメンテーター・(株)R.project取締役)
水泳は毎回と言って良いほど世界記録が出る。一方で陸上は一大会に一回世界記録が出れば良い方で、女子の短距離系は1980年代から記録が止まってしまって(どうしてだろう?)いる。では、なぜ水泳の記録は伸び続けるのかを自分なりに考えてみた。
理由は二つあると思う。一つは競技自体が今も拡大しつつあるということ。もう一つは流体力学の方が影響すること。
水泳のメダルは、もともと、白人が多い西洋国、環太平洋、コモンウェルス系、に偏っていた。おそらくはプールという施設を普及させて、そこにコーチを置きながら指導をする必要がある点で、ある程度国の豊かさがないと難しかったのだと思う(体操などほかの競技も近い条件のものはあるが)。近年のメダル獲得国の推移をみるとほかの国が参入しはじめてきているので、競技人口が拡大しつつあると想定される。人口が増えている競技の限界値は突破されやすい。
もう一つの流体力学の方だけれど、この影響が大きいと思う。水泳は水の抵抗が大きいために、流体力学的な世界が大きく支配している。筋力の強弱よりも、フォームや、水感(水の感触がわかることをそう言うのだそうだ)が大きく影響するそうで、それらはつまりどう抵抗を受けない形にするかというのが重要なのだろうと思う。
流体力学が影響するような進化の領域では、鮫と鯨が違う系統ながら、水の中に適応するために同じような形態(収斂進化)を獲得した。自然淘汰に影響を与えるほど、水の中での形は重要なのだろうと思う。
その流体力学は、複雑だそうで、今も水泳選手の泳法は変わり続けている。一方で例えば陸上競技の走りの世界は多少の微調整はあったが、走りに劇的な変化は起きていない。もちろん直立二足歩行という日常で行っている動作に近いからというのはあるだろうが、それにしても技術の変化のスピードは遅い。物体が地面に力を加えその反力を受け取り前方に移動するというような世界は、ある程度理屈がわかってフォームが確定しているからだろうと思う。時速でも40kmほどしかでないので、陸上の世界では流体力学的な話はほとんど起こらない。
そういえばどこかの研究者が大腿部の表面積と、平泳ぎのスピードの関係を調べていた。曰く足を体の横に広げる瞬間がブレーキになるそうで、大腿部の表面積が小さい方が有利な可能性があるという話だった。水泳の世界は奥深い。
(為末大HPより)
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