マルコスは独裁者か英雄か フィリピン“英雄墓地”埋葬問題
Japan In-depth / 2016年9月24日 19時0分
過激な発言と強硬手段で何かと物議を醸し、国際舞台でのニュースメーカーとなっているドゥテルテ大統領が容認姿勢を明確にしたため、一気に「英雄墓地埋葬」が具体的に動き出し、命日を前にした9月18日の移送・埋葬が一度は決まったのだった。
■最高裁が埋葬を一時凍結
ところが反対派をまとめる市民連合バヤンなどが中心になってフィリピン最高裁に「英雄墓地埋葬の一時差し止め」を求める訴訟を起こしたところ、最高裁がこれを認め10月18日までの「埋葬凍結」が決まった。
このためドゥテルテ大統領が推し進める英雄墓地埋葬は約1カ月延びた形になっているものの、反対派はさらなる法廷闘争と運動の拡大で「絶対阻止」を目指しており、最高裁の凍結期限切れの10月18日に向けて混乱が予想される事態となっている。
地元紙などによると歴代大統領がやろうとしなかった「火中の栗」をあえてドゥテルテ大統領が拾おうとする理由は「父親がマルコス内閣の閣僚を一時期務めたことがあり、恩義を感じているため」と説明、個人的感情に基づく措置に対し「広く国民の感情を反映したものとは言えない」としている。
■天皇皇后両陛下も訪問した英雄墓地
マニラ国際空港の東側ダギッグ地区に広がる広大なフィリピン英雄墓地には独立戦争や太平洋戦争などで祖国に殉じた約4万1500人の兵士が眠る。兵士以外にもガルシア大統領、マカパガル大統領など国家英雄も埋葬されている。今年1月にはフィリピンを公式訪問した天皇皇后両陛下も慰霊のために訪れている。こうしたフィリピン人にとって「聖なる領域」に戒厳令を布告して自らの政権に対立する組織や人物への容赦のない弾圧を繰り返し、最後は米国に「亡命という逃亡」をしたマルコス元大統領を埋葬することは許されない、と反対勢力は主張する。
コラソン・アキノ元大統領らによる1986年の「ピープルズパワー革命」を知るフィリピン国民が共有する感情でもあるのだ。しかしその一方でマルコス時代を知らない若い世代が増え、マルコス元大統領を「強い指導力の大統領」とする見方が広がっていることも事実である。
麻薬犯罪撲滅、南シナ海領有権問題と内外に課題山積のドゥテルテ大統領がタイムリミットの迫る中「マルコス埋葬問題」をどう解決するのか、国民は注目している。
トップ画像:The Wandering Angel
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