再び日本の大学、ランキング低迷のなぜ?
Japan In-depth / 2016年9月25日 18時0分
渡辺敦子(研究者)
「渡辺敦子のGeopolitical」
21日、英国のTimes Higher Educationの2016-17年版世界ランキングが発表された。日本の大学の200位以内は相変わらず東大(39位)と京大(91位)の2校。アジアの大学の全体的な躍進が目立つ中で、日本の大学の凋落は前年同様変わらぬ傾向だ。
2014年から始まった文部省の「スーパーグローバル大学」構想にもかかわらずの低迷はなぜなのか。この点については7月にアジアランキングを分析して少々書いたが、少し違った視点、特に大学の「価値観」という問題から考えてみたい。
ランキングを伝える同誌の記事に、リチャード・ロビンソンマードック大学名誉教授(オーストラリア)の興味深いコメントが載っていた。いわく、アジアの躍進は確かにそうなのだが、それはほんの一部に過ぎず、アジアの大学が欧米の大学のような‘giant intellectual hub’になる可能性は薄い。なぜなら「彼らは教育について異なる考え方を持っているからだ」。アジアの大学は「大変にプレッシャーの大きな環境」で、「暗記せねばならないことが多」く、「クラスでのディスカッションは少ない」。この学びのスタイルが「グローバル」になるかについては、「ごく一部の科学技術的な分野」を除いては懐疑的である。
この認識は、プレッシャーが大きく大量の暗記を強いられるのは大学に入るまでであり、大学そのものではない、という大きな事実誤認を除いては、妥当な分析である。ちなみに大学は、入学するまでが大変で、入ってしまえばレジャーランドが待っている、という公式は、中国人の友人によれば中国の大学でもある程度当てはまるそうだ。この点では、上記ロビンソン教授のコメントのポイントは、大学はintellectual hubであるべき、という点にあるように思う。つまり日本の大学は、真に知性の中枢であろうか。
もちろん世界ランキングそのものには、批判も多々ある。また、英語圏の価値観だけが正しわけではなかろう。さらに学術界の共通言語が英語である以上、英語圏の大学が強いのは当たり前で、日本語で教育を行ってきた日本の大学が突然、支援事業によってランクを上げることはあり得ない。かといって突然英語での授業を増やせば、先生の不足はもちろん、学生全体の学力低下は避けられない。日本の報道によれば同誌は日本の大学の国際化の遅れや共同研究の少なさを問題として指摘していたようである。だがこのコメントの中には、もっと根本的な日本の、あるいはアジアの大学の問題があるように思う。
ちなみに「スーパーグロバール」は和製英語である。英国ではここ数年、Superdryというファッションブランドが学生の間で大変な人気だ。このブランド名はそもそも、日本の某ビールブランドの、英語としては不自然な商品名に想を得たものだった。このロゴには「極度乾燥(しなさい)」という意味不明な日本語が添えられている。これに従えば、Superglobalは「極度世界化(しなさい)」だろうか。
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