欧州の戦略家は「大陸型」と「海洋型」
Japan In-depth / 2016年9月27日 8時2分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(9月26-10月2日)」
今週の原稿は出発直前のストックホルム空港のラウンジで書いている。今回はハンガリーからポーランドを経てスウェーデンを訪れた。今回も多くを学んだ出張となったが、最大の成果は、欧州の戦略家たちの考え方にはどうやら「大陸型」と「海洋型」の二種類があるらしいことが分かったことだろう。どういう意味か。
例えば今回訪問した中、東欧のハンガリーとポーランドは典型的な大陸型、彼らは潜在的脅威と「陸の国境を共有するか否か」でその国の安全度を測る傾向があるように思えた。これに対し、英国などは典型的な海洋型で、欧州大陸だけでなく、ユーラシア大陸全体の勢力均衡についても、常に敏感なようである。
こうして考えてみると、今回最後に訪問したスウェーデンはその中間型で、大陸的要素と島国的要素を兼ね備えているようだ。スカンジナビア全体が巨大な半島であることに鑑みれば、なるほどそういうことなのか、と妙に合点が入った。やはり、疑問が生じたら、何度でも地図を見直すことが基本中の基本ということである。
更に痛感したことは、「バルト海世界」にスウェーデン、デンマーク、フィンランド、ロシア、バルト海三国、ポーランド、ドイツといった伝統的プレーヤーがおり、今もそのゲームが続いていることだ。ロシアのバルト海三国での影響力拡大に対抗し、スウェーデンがゴットランドという沖の島に軍隊を駐留させるという論理自体が新鮮だった。
〇欧州・ロシア
10月2日にハンガリーで難民受け入れに関する国民投票が行われるが、結果は今から見えている。質問内容が、「あなたは、EUがハンガリー国会の承認なしに、非ハンガリー人のハンガリーへの強制的移住を定めることができることを望むか」なのだから、答えは否に決まっている。これが今のハンガリー民主主義の実態なのだ。
〇東アジア・大洋州
28-29日にフィリピン大統領がベトナムを訪問する。両国が一体どのような話をするのか、とても気になるところだ。ちなみに、今回の出張で話した欧州人の多くは南シナ海に関してこのような発想を持てない。中国と国境を接することのない欧州人に中国の潜在的脅威を理解させるのは並大抵ではないということだ。
〇中東・アフリカ
シリア問題が泥沼化している。国際場裏での米露の罵り合いは面白いが、要するに米国はロシアにやられっぱなし、ということだ。国連安保理での米国務長官の発言に「米国の無力」を感じた向きは筆者だけではないだろう。プーチン大統領の高笑いが聞こえるようだ。
〇アメリカ両大陸
米国時間で26日夜、今から数時間後にはクリントンとトランプによる第一回TV討論会が行われる。残念ながら、その頃筆者はミュンヘン発の帰国便に乗っているはず。討論会の結果については来週まとめて書くことにする。両者が建設的な議論をしてくれれば良いのだが、史上最低の凡戦や史上最悪の混乱とならないことを祈ろう。
〇インド亜大陸
今週も特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。
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