ハンガリー国民投票不成立 難民受け入れ問題
Japan In-depth / 2016年10月4日 7時3分
宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)
「宮家邦彦の外交・安保カレンダー(10月3-9日)」
先週末の10月2日、ハンガリーで難民受け入れに関する国民投票が行われた。前回本欄では、「結果は今から見えている」と書いたが、グッドニュースは、ハンガリー人たちが同国民主主義の良識を示したことだろう。不思議なことに有効投票は40%に止まり、国民投票が成立しなかったからだ。欧州の良識派にとっては救いだろう。 他方、バッドニュースは、実際に投票した有権者の98%が反対したことだ。前回も述べた通り、質問内容は、「あなたはEUがハンガリー国会の承認なしに、非ハンガリー人のハンガリーへの強制的移住を定めることができることを望むか」だったから、答えは反対に決まっている。国民投票が成立しなかったのは不幸中の幸いという訳だ。 いずれにせよ、日本人の今週の関心は「誰がノーベル賞を取るか」であり、今頃は在スウェーデン日本大使館も大忙しのことと思う。そうこうしている内に、また一人、日本人が医学生理学賞を獲得したそうだ。それにしても、日本は何と平和な国なのか、日本にこそ、「ノーテンキ平和賞」を授与すべきではないかと思うほどだ。 〇欧州・ロシア 2-5日に英国保守党が党大会を開く。報道によれば、同党大会でメイ英首相は2日、欧州連合(EU)離脱プロセスを2017年第1四半期中に開始する方針を明らかにしたという。企業や投資家の不透明感を払拭するため、EU離脱完了日に現行の全てのEU法を英国法に転換する法案を議会に来年提出するとも述べたと報じられた。 筆者はこの新首相、なんだかんだ言いながらEUへの英国離脱通報を先延ばしするのかと勘ぐったこともある。だが、今回同首相は「EU離脱を国民が選択した以上、あまりに長く先延ばしすべきではない」と明言した。これにより、英国は2019年までに2年間のEU離脱交渉を完了させなければならなくなるのだが・・・。 さて、果たしてそう上手く事は進むだろうか。大いに疑問だ。この点についてメイ首相は、「我々が望むのは英国にとって最良の形での離脱であり、最も迅速な離脱ではない。タイムスケールを設定するつもりはない」と述べたという。「悪魔は詳細に宿る」という英語の格言がそのまま当てはまるような政治状況である。 〇東アジア・大洋州3-21日にアラスカで米韓空軍合同演習が、4-12日にはフィリピンで米比の上陸作戦が行われる。米韓合同演習では北朝鮮の核施設を制圧する演習が含まれ、後者では実弾演習もあるそうだ。それにしても、比新大統領はこうした米比合同演習を今後中止することが中国に如何なるメッセージを送るか、本当に分かっているのだろうか。 〇中東・アフリカ「アラブの春」に失敗した感のあるアラブ地域で今週選挙が行われる。7日にはモロッコで議会選挙が、8日にはパレスチナ自治区で地方選挙が、それぞれ実施されるのだ。一方、イラク議会では現職外相の汚職容疑について審議が行われる。このような不完全な民主主義でも、アラブなら良しとすべきなのだろうか。難しいところだ。 〇アメリカ両大陸トランプは相変わらず女性と少数派を敵に回しているのだが、彼が第二回TV討論に絡め。ヒラリー候補の夫であるクリントン元大統領のSEXスキャンダルを取り上げるという噂が飛び交っている。泥仕合とは正にこのことだが、仮にビル・クリントンの新スキャンダルが出ても、反ヒラリー票が大幅に増えることはないと思うのだが・・・。 〇インド亜大陸6-7日に第四回中印戦略・商務対話がニューデリーで開かれる。インド外交は強かだが、その本質は「非同盟2.0」であり、近い将来、西側に擦り寄ってくるようなことはないだろう。この点につき過剰な期待は禁物である。 今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きはキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。この記事に関連するニュース
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