象徴天皇は私たちがつくった その2 日本憲法起草者が語った
Japan In-depth / 2016年10月4日 23時0分
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
日本国憲法の草案作りでは中核となる起草運営委員会を構成したケーディス陸軍大佐、マイロ・ラウエル陸軍中佐、アルフレッド・ハッシー海軍中佐の3人が憲法前文を書いた。憲法全体でほぼ各章ごとに8つの小委員会を作り、法務経験のある米軍人がそれぞれの小委員会の責任者となり執筆した。9条のある第二章はケーディス大佐自身が書いた。とくに重要な天皇に関する第一章の作成にもケーディス大佐が加わったという。
ケーディス氏は1906年、ニューヨーク生まれ、コーネル大学卒業後にハーバード大学法科大学院を修了して、1931年にはすでにアメリカの弁護士となっていた。連邦政府の法律専門官として働く間に第二次大戦が起きて、陸軍に入った。陸軍参謀本部に勤務後、フランス戦線に従軍した。
そしてケーディス氏は1945年8月の日本の降伏後すぐに東京に赴任して、GHQ勤務となったわけだ。だから日本憲法起草当時すでに39歳、法務一般でも十分に経験を積んだ法律家ではあった。
ケーディス氏は日本には1949年まで滞在した。帰国後は軍務を離れ、弁護士に戻った。戦前にも働いたことのあるニューヨークのウォール街の「ホーキンズ・デラフィールド・ウッド法律事務所」にまた弁護士として加わった。その後の職務では税務、証券、財政などの案件を扱ってきたという。
私が彼にインタビューしたのは1981年4月だった。彼は75歳となっていたが、週に二度ほど出勤して、実務をこなしているとのことだった。日本憲法を書いた人物がウォール街の一角で地味な法律業務をしているというのも、いくら35年という歳月が過ぎたとはいえ日本人としては奇異な印象を受けた。ケーディス氏は礼儀正しい白髪の紳士だった。日本憲法作成に関する往時の資料までを用意して、私を丁寧に迎えてくれた。
当時の私といえば、基本的には毎日新聞の記者だった。だがその1981年にはワシントン特派員から転じて、一年間という期限でアメリカの研究機関「カーネギー国際平和財団」の上級研究員として日米安全保障関係についての調査や研究にあたっていた。ケーディス氏のインタビューもその研究活動の一環だった。
ただし私にケーディス氏との会見を強く勧めてくれたのは憲法の起源の研究でも知られた評論家の江藤淳氏だった。当時、ワシントンの大手シンクタンクに招かれていた江藤氏は私に憲法起草の経緯を説明し、なお健在のその中心人物のケーディス氏から証言を得ることを提案してくれたのだった。
(その3に続く。その1はこちら。全5回。毎日午後11時にアップ予定。この論文は月刊雑誌「WILL」2016年11月号からの転載です。)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
新刊『愛子さま 女性天皇への道』が発売! 世論調査では9割が認める「女性天皇」。愛子さまが天皇になるべき「5つの理由」とは
PR TIMES / 2024年11月26日 10時45分
-
トランプ氏、国家情報長官に元民主党下院議員ギャバード氏指名へ
ロイター / 2024年11月14日 7時58分
-
ニュース裏表 平井文夫 「女系天皇」浮上も…石破政権〝左傾化〟の懸念「憲法改正」棚上げ「選択的夫婦別姓」実現 保守派に悪夢も少数与党の弱み「これが民意だ」
zakzak by夕刊フジ / 2024年11月14日 6時30分
-
【11月28日】第6回CLOフォーラム・ジャパン2024 開催
PR TIMES / 2024年11月13日 16時40分
-
中国の台湾戦略、そして尖閣戦略は その1 習近平主席が尖閣奪取を命令
Japan In-depth / 2024年10月27日 19時0分
ランキング
-
1仏英、ウクライナへの部隊派遣を検討か トランプ米政権視野に浮上 仏紙報道
産経ニュース / 2024年11月26日 10時39分
-
2ロシア使用の北朝鮮製弾道ミサイルに“欧米や日本の部品” ウクライナ国防省が明らかに
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月26日 7時59分
-
3セルビアの文化財の時計塔に中国語の落書き!中国ネット「恥ずかしい」「中国人とは限らない」
Record China / 2024年11月26日 13時0分
-
4トランプ2.0、強気の「MAGA」が逆目に出る時
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月26日 14時0分
-
5リトアニアで貨物機墜落、1人死亡 ドイツは外国の関与示唆
AFPBB News / 2024年11月26日 12時38分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください