「3人の親を持つ赤ちゃん」が変える未来 魔法の不妊治療
Japan In-depth / 2016年10月15日 11時37分
一方、この話題に飛びついたのは女性をターゲットにしたメディアである。女性向けデジタルメディアのジェゼベル(JEZEBEL)では、遺伝病を持った女性だけでなく、「35歳以上の不妊治療がうまくいかず苦しんでいる女性たちにとって、ジョン・ザン医師の技術はエキサイティング」だと、絶賛。また、「同性愛者たちにとっても、同性同士両方の遺伝子を子孫を残すことが可能になる日も近いのでは」と期待を寄せている。
アメリカでは、卵子提供者を募集する広告がちまたにあふれ、まるで献血に行ったかのように、「きょうは卵子を提供してきた」とブログに書く女性がいるほどである。「自身の卵子が劣化しているのなら、体外受精を繰り返すより、他人の卵子を使った方が早い」という合理的な考え方をしているとも言える。しかし、若い女性の健康的な卵子を使い、自分の遺伝子を残すことが実際な選択肢としてあるのであれば、挑戦したい女性も多いはずである。
では実際にどれほど現実的なのか?ザン医師に話を聞いた。
Q 今回の「3人の親を持つ赤ちゃん」の技術で体外受精の成功率はどう変わりますか?
A ザン医師「例えば、43歳から48歳の女性の場合、1回の体外受精で出産にいたる割合は1%です。しかしこの技術を使えば、成功率を22〜30%にまであげることが可能だと私は予測しています。1回あたりこの割合ですから、数回繰り返すことで、全員が妊娠すると思っています。」
Q 具体的にはいつ頃に実現可能ですか?
A ザン医師「まだいつ実現するかは言えませんが、これから多くの臨床テストを行います。そして科学的に危険のない方法であるという証拠を提示したいと思っています。」
Q 不妊治療での使用については倫理上の問題があるという声も多いですが、それについてはどう考えていますか?
A ザン医師「文化が違えば、第3者から提供された卵子を使った体外受精自体にも倫理的に問題がある国もあります。私は、母親が自分の遺伝子を残す技術の方が、100%他人の卵子を使うより倫理に叶うと思っています」
卵子の劣化にはあらがえず、体外受精で失敗を繰り返してきた多くの不妊治療患者たちにとって、若い卵子を使い、自分の遺伝子を残すというのはまるで魔法のような出来事である。
また、高齢化が進む日本にとっては、価値のある技術のようにも思えるのだが、会合に参加していた日本の不妊治療の権威、加藤レディースクリニックの加藤恵一院長は、「病気に苦しんでいた患者に施術した今回の例とは違い、何歳になっても不妊治療が可能になることを許可するというのは倫理的に問題がある」として、今後日本でこの技術が採用されることがあるとは考えにくいとした。
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