自民党劣化の証 白紙領収書問題
Japan In-depth / 2016年10月26日 12時0分
山田厚俊(ジャーナリスト)
臨時国会開催後、すぐさま話題になったのは、「白紙領収書」の問題だ。政治資金パーティーの際、白紙の領収書を受領し、受け取った側の秘書らが自ら金額を書き込んだりしていたもので、すでに臨時国会で稲田朋美防衛相、菅義偉官房長官がその実態を認めている。ところが、高市早苗総務相は、「法的には問題ない」と答弁。また、この事態を重く受け止めた二階俊博幹事長は10月11日、党所属議員に対して「政治資金パーティーにかかる運用改善について」と題した通達文を配布した。要は、日時や金額はきちんと書き込むこと、多忙でその事務が出来なかった場合、事後に記載した領収書を交付することと記されている。これで事態は収束したかのようだ。
ところが、読売新聞が10月23日付、この問題を1面および社会面で報じた。それによると、23人が白紙領収書をパーティーで提供または受領していたことがあると分かった。閣僚では、菅官房長官、稲田防衛相のほか、塩崎恭久厚労相、松野博一文科相、山本有二農相、世耕弘成経産相、山本公一環境相、今村雅弘復興相、加藤勝信1億総活躍担当相の8人。さらに、取材に対して50人が「確認が困難」として授受の有無を明らかにせず、71人は回答すら寄せなかったという。
自民党中堅議員の元政策秘書で、現在は民間企業勤務のA氏は語る。「恥ずかしながら、私も白紙で授受していました。皆そうでしたから、それが“永田町ルール”だと信じて疑問すら持っていませんでした」
ベテラン議員も一様に白紙領収書を当然のように出していたのだという。しかし、少なくても2000年くらいまでは、このような稚拙なことはしていなかったと、元ベテラン秘書のB氏は語る。重要閣僚の秘書を長年務め、第一線を退いたものの、今も永田町では一目を置かれているご仁だ。そのB氏は「以前の自民党では考えられないこと。こんなに劣化してしまったんだと、改めて驚いた」と、嘆く。
「パーティーで、人がごった返して領収書に金額を入れられないのは今も昔も同じ。しかし、昔は『仮』とか入れて渡したり、受け取って、金額を入れ直していたりした。それが『仮』のまま金額が入っていなかったとしても、事情を理解してもらえていた。」
そんな先人たちの知恵が抜け落ちてしまっているというのだ。「民間企業だと常識的にアウトのものが、永田町はセーフだなんて道理は通用しない。特権階級でいいなんて開き直っているようじゃ、自民党ももうお終い。」
驕りが見える今の自民党。有権者からソッポを向かれる日もそう遠くはないのかもしれない。
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