生前退位問題「有識者会議」の議論に注目 麗澤大学教授八木秀次氏
Japan In-depth / 2016年10月26日 18時0分
「細川珠生のモーニングトーク」2016年10月22日放送
細川珠生(政治ジャーナリスト)
Japan In-depth 編集部(坪井映里香)
10月17日、総理の私的諮問機関、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の初会合が官邸で行われた。8月8日に直接「お言葉」が表明されたのは記憶に新しい。その「お言葉」を受け、現在82歳の今上陛下の公務の負担軽減等を図るため、どのようなことができるのかについて、議論していく。年明けに論点をまとめ、来年の通常国会で必要な法整備を行うというスケジュールだという。麗澤大学教授の八木秀次氏をゲストに迎え、今後の政府の対応や、天皇陛下の意思について伺った。
まず、8月8日の「お言葉」の趣旨としては、「高齢で、あるいは病気も抱えながら現在なさっているご公務、正式には公的行為、がたくさんあるわけですけども、それをすべて全身全霊でできなくなる恐れがあるので退位をしたい」ということだったと八木氏は考える。しかしその「お言葉」に対して、「公務の負担があるということと退位との間には飛躍があると考えられる。」と続けた。「公務の負担軽減には、退位以外にもいくつか方策はある」からだ。たとえば憲法に定められているものとして、高齢、病気などで公務、国事行為ができなくなった際は、国事行為の臨時代行(ほかの皇族に肩代わりをしてもらう)、摂政をおく、という二つの制度がある。しかし、8月8日の「お言葉」で天皇陛下はその二つの制度に違和感を示された。
「天皇陛下の考えと政府の対応は、分けて考えなければならない。」と八木氏は述べた。天皇陛下のお考えはそれとして、政府の対応としては公務負担軽減のための方策についてすべて検討し、その上で退位でなくてはならないということであれば、それについて検討していくということだ。
「憲法上明確に規定があるものを使わないことを政府は言うことはできないわけですから、そこについて慎重に検討するということ。」と八木氏は述べた。また、もしも天皇陛下の意向によって直接国の制度を変えるために政府が動き始めるということになると、「これは(憲法が禁じている)天皇の政治的な活動になる」ことも理由の一つだ。そこは切り分けて、「陛下のご意向はご意向としながらも、政府としてどのように対応ができるかということは別として考えなければならない。」と八木氏は強調した。
天皇陛下の公務というのは、大きく三つに分けられる。憲法で定められている国事行為、被災地や大会に行くといった公的行為、宮中祭祀といった伝統的な私的行為。具体的に公務の中でどれを削っていくのかというと、八木氏によると、「公的行為とは、天皇が日本国および日本国民統合の象徴であることに伴って、付随的に出てくる行為だから、ここの部分は整理してよい、しかるべき。」との考えを示した上で、「天皇陛下ご自身が、公的行為こそが象徴天皇の象徴天皇たるゆえんだとご理解をなさっている。」と、天皇陛下は公的行為こそを積極的に行っていきたいという姿勢であることも指摘した。天皇陛下のそうしたお考えにより、公的行為は昭和天皇のときと比べて5倍とも7倍とも言われるくらい増えている。
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