仏最大級の難民キャンプ撤去 他収容施設が受け入れへ
Japan In-depth / 2016年10月29日 18時0分
Ulala(ライター・ブロガー)
「フランス Ulala の視点」
フランス・カレーの「ジャングル」と呼ばれている難民キャンプの住人の立ち退きがついに終わった。カレーには1990年後半から英国に渡る機会を待つ難民・移民たちがキャンプを設営し滞在するようになっていたが、この1、2年でその規模が拡大し大問題と拡大していた。6千人~8千人と言われる難民・移民たちは主にアフリカのスーダン、エリトリア、エチオピア、およびアフガニスタンの出身で、最近では内戦の混乱が続くシリアやイラクの難民も増えてきていたが、その全ての滞在者がフランス全国に点在する160カ所の受け入れ施設に向けて出発したのだ。 この難民キャンプの存在はいろんな面で注目を浴びてきた。まず、衛生面の悪さ。どうにかして英国に渡ろうとする難民たちがトラックを襲ったり、通行を妨害するなどの危険な状態。絶えることのないカレー市民とのいざこざ。その結果、元からいた市民がカレーを離れる姿も後を絶たず、現在のカレーの街中は売地や貸家の看板が立った店が目立つ上、カレー市の失業率は16%(フランス全体の平均は10%ほど)にまで膨れ上がっている。 難民たちが置かれている劣悪な環境をめぐって国内外からの団体からの抗議も常に叫ばれ、カレーの市長も「どうしてカレーだけがこんな苦しみに合わなくてはならないのか」と国の迅速な行動を求めてつづけてきた。そしてとうとうフランス政府が「人道目的」として撤去に踏み切ったのだ。 しかし立ち退きを強いられた難民の受け入れ先の確保にも、多くの困難が待ち受けていた。だいたいフランスの内政も近年は厳しい状況だ。毎年失業者の数は膨れ上がっている。貧困の度合いが実感しやすい「貧しさのため生活必需品が買えなかった経験があるか?」というアンケート結果(表1・注1)を見ても、フランスに住んでいるフランス人が、食べものを買うことすら困った経験を持つ割合が年々増加傾向にあることがわかるのではないだろうか。 フランス人でさえ十分助けられない状態なのに、その上さらなる負担がのしかかることに不満を持つ人もおり、難民に反発する住人、治安が悪くなることを心配する住人からの反対デモが起こった地域もあった。 それでも各地で話し合いが何回も行われ説得を重ねながら、なんとか難民受け入れる環境をつくりあげ、その努力のかいもあり現時点では大多数の受け入れ先でスムーズに事は運んでいる。 フランス各地であたたかく迎えられた難民たちの中からも喜びの声が聞こえる。「戦争がいつも起こる自分の国には帰りたくない」「積極的にフランス語を学びフランスに滞在したい」と語る若者たち、毎日が暴力や危険との隣りあわせだった「ジャングル」から離れられてホッとしている人達の様子がこの2、3日ニュースで映し出されていた。今後は、このまま英国を目指すのか、フランスで難民申請をするのか、その他の選択肢を希望するのかなどの聞き取りなどが行われ、フランス語の授業や生活方法の教育がなされる予定だ。 一方、滞在者が去り、後に残った「ジャングル」では現在あちこちで炎に包まれている。逮捕者なども出るなど騒然とした様子も伝えられるが、関係者の話しによると難民たちが立ち去る時に火を着けることはよくあることだそうだ。もう戻ってこられないことが分かっているからこそ現れる行為でもあるともいえると言う。インタビューで作業を行った担当者はこうコメントしている。「ご覧のように現在ここでは火災が起こっています。でもその意味することはもう屋内には誰もいないっていうことなのです。」 まだまだこれからもこのジャングルであった場所にたどり着く難民もいると予想されるが、到着次第フランス各地の受け入れ先に送られることは決まっており、住居として使われた小屋の解体作業も着々と行われている。フランス最大級の難民キャンプがあったところではあるが、以前の風景に戻れる日はもそうは遠くなさそうだ。 (注1)Pew Research Center, Pew Global Attitudes Project ReportMay 23, 2013http://www.pewglobal.org/files/2013/05/Pew-Global- Attitudes-Economic-Report- FINAL-May- 23-20131.pdfこの記事に関連するニュース
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