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「実は治安は悪化していない」という説 自壊した日本の安全神話その7

Japan In-depth / 2016年10月31日 11時0分

どうしてこういうことになるのかと言うと、やはり日本人の遵法精神がなかなか高かった、ということを挙げねばなるまい。1960年代から80年代にかけて、欧米の大都市では、犯罪発生率が2倍以上になったところも珍しくなかったのに、日本では2割弱の増加にとどまっている。実際このことは、都市の工業化が進み、人口密度が高くなると、犯罪発生率も上昇する、という社会学上の通説に反するとして、世界的にも注目された。

さらに記憶に新しいところでは、東日本大震災の時、被災地での窃盗被害が非常に少なく、配給食料の奪い合いなど見られなかったことが、世界中に驚きを与え、賞賛された。にも関わらず、多くの人が「治安が悪化した」と感じる背景には、SNSなどの普及が考えられる。凶悪犯罪が起きた場合、ネットを通じて、あたかも現場に居合わせたかのような臨場感を味わえる上、時と場合で「犯人捜し」に参加できたり、事件について自由に論評し、不特定多数に開陳できる。今や子供でも知っていることだ。

つまり、かつては遠いどこかの出来事であった犯罪が、あたかも自分の身の回りで起きたことのように感じられるから、体感治安が悪化したと、人々が思い込むのだろう。

念のため述べておくと、私は、日本の治安は本当は悪化していない、という主張には与しない。今回はあくまで、データを冷静に見ることの重要性を訴えたかっただけである。次回、ネット社会における犯罪報道について、もう少し考えてみたい。

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