切られた「連合」の仲間達 共産党は裏切る ベトナム戦争の教訓 その2
Japan In-depth / 2016年12月7日 10時0分
パリ和平協定により南ベトナム領内には共和国政府と臨時革命政府と第三勢力という三つの政治勢力の並存が認められた。その複雑な政治状況のなかで1975年春には北ベトナムがまた南ベトナムへの一大軍事攻勢を始めた。そしてわずか55日間で南ベトナム政権を完全に軍事粉砕したのだ。
1975年4月30日のサイゴン陥落による戦争終結だった。北ベトナムが国家の総力を投入して南ベトナムを崩壊させたのだ。その間、米軍は一切、無関与だった。アメリカからの南ベトナム軍への武器弾薬の供給もすっかり減っていた。他方、北ベトナム軍は中国とソ連の両方から共産主義の連帯の下に巨大な軍事援助を受け続けた。
だがそれでも北ベトナムの共産主義政権は自国の直接の軍事介入を否定し、「南ベトナム人民の解放勢力が腐敗政権を滅ぼす」という宣言を崩さなかった。対外的には南ベトナム臨時革命政府の名を前面に出していた。
そのプロセスで敗色の濃い南ベトナム政府は必死で交渉による停戦を求めた。北側も当初は南ベトナム政権のグエン・バン・チュー大統領が辞任すれば、交渉に応じることを示唆していた。南側ではチューが辞任し、副大統領だったチャン・バン・フォンが大統領になった。だが北側はこれを「チューなきチュー政権」と呼び、はねつけた。そこで南側ではそれまで第三勢力とされたズオン・バン・ミン将軍が大統領になった。ミンはチュー政権には反対し、解放勢力側に理解があるとされた政治指導者だった。
ところが北ベトナム側は南革命政府の名の下にこのミン政権からの条件降伏への交渉の懇願に対して「ミン政権には共産主義に反対する人物がいる」と主張して、拒否したのだった。この瞬間こそがベトナム戦争の真実の時だったともいえた。いわゆる解放勢力がついに「共産主義」というキーワードを明言したからだった。
(その3に続く。その1はこちら。全3回。明日11:00掲載予定。)
この記事は雑誌「歴史通」2016年11月号に掲載された「共産党は裏切る ベトナム戦争の教訓」の転載です。
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