退去処分のタイ人少年 仏の場合
Japan In-depth / 2016年12月12日 0時24分
実は、日本もフランスと同様にこの「児童の権利に関する条約」に加盟しています。しかしながら、現在の日本では生まれてから16年住んでいようとも、18歳未満であろうともウティナン君の滞在は認められないことなのです。
確かに、安易に滞在を認めることで日本に不法滞在者が増えることが懸念されます。ですが、将来を懸念するまでもなく、すでにたくさんの外国人が日本に来ています。現在、日本には30万人以上の不法滞在外国人がいるともいわれており、彼らのほとんどは単にビザが切れても日本にオーバーステイしているだけで、なんらかの収入を得ながら合法的に滞在している普通の外国人と同じように生活しています。学校で教育を受けている子供達ももちろん存在し、ウティナン君のようなケースはこれからも増えていく可能性もあります。
小中高の授業料は無償なため、教育するお金はもちろん日本が出しているわけですが、いざ強制退去が決まれば、さらにお金をかけて帰ってもらっているのです。このプロセスから日本が得ることは何でしょうか?投資しているだけで、何も残らないように思えます。一方で、少子化で日本の人口水準が維持できないとして、新たに外国人を受け入れようとしているのです。それならばいっそ、日本で教育を受けた未成年者が活躍できるようにした方が、スムーズに日本に馴染み、うまくいくのではないでしょうか?すでに日本語が話せるうえ、日本に住む基盤までできているのですから。
ちなみに、「バルス通達」では、大人の不法滞在者についても項目があります。就労者であれば2年間働いた実績があり、12カ月分の給料明細が出せる場合に滞在を認めるとしています。認められる人数はまだまだ少ないですが、人手不足の職種で働き続けている不法滞在者にも道が開けたのです。
フランスは確かに失業率が高い国ですが、工場、ホテル、工事現場、レストランなどではいつも人手不足であり、現在不法滞在者の労働の場にもなっている現実もあります。これらの業界の人手不足を解消するために、フランスの職業安定所では、フランス語があまり話せない外国人たちにフランス語の勉強込みで工場、レストランなどの就職を支援するコースも存在するぐらいなのです。
そんな中、すでに働く不法滞在者は、長年働いているのに滞在許可書が下りないため不当な扱いを受けているというデモが街角で繰り広げるなど、現実と法がかみ合っていない点が問題となっていた経緯もありました。
このように、「バルス通達」は、「かわいそうだから助ける」という感情論だけで出されていません。なんとか少しでもみんなが幸せになれることを考えていることはもちろんですが、冷静に国の利益と子供の権利を守ることを考えた末の結論とも言えるでしょう。それに対して、日本は何を重視しているのでしょうか。
現在の日本の司法はウティナン君の今回の結果は当然のことだとしています。しかし、これを機に、現在の日本の事情と考えあわせて、こうしたケースにどう対応すべきか、ちゃんと議論し誰もが納得する結論を導きだし改善していくことが必要であると思わずにいられないのです。
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