大統領官邸爆破テロ阻止 厳戒態勢のインドネシア
Japan In-depth / 2016年12月15日 11時0分
■1月のテロと同一グループの犯行
ジャカルタでは今年1月14日、中心部目抜き通りで爆弾と銃撃戦によるテロ事件が発生、実行犯を含む8人が死亡している。今回逮捕された男女7人は、この事件の主犯格でシリアに潜伏中とされるバフルン・ナイム容疑者が組織したグループに所属しているとみられ、同容疑者から資金提供も受けていたという。
1月の事件を機にジョコ・ウィドド大統領は国家警察、国軍などの治安機関に「テロ組織の徹底捜査」を指示、デンスス88を中心にテロ組織の壊滅とメンバーの摘発に積極的に取り組んできた。その結果、ナイム容疑者から資金と情報提供を受けた複数のグループが浮上。ジャワ島の各地で個別にテロを計画、選抜された各グループのメンバーがジャカルタでテロを実行することを探知。内偵と尾行、情報収集を続けた結果、国家の中枢である大統領官邸の自爆テロ計画を察知、テロ実行予定日の前日というきわどいタイミングで阻止することに成功したのだった。
ジョコ・ウィドド大統領は容疑者逮捕と官邸でのテロ防止について「インドネシアにはテロの入り込む余地はないことが証明された」高く評価するとともに国民の協力が不可欠として市民からのさらなる情報提供を呼びかけた。
ジャカルタでは1月のテロ以降、スハルト長期独裁政権(1998年崩壊)時代に住民の相互監視と不審者あぶり出しに一定の効果があった「隣組制度」を一部復活して、市民相互による部外者、不審者の監視と通報制度を強化している。
■ジャカルタ州知事選で煽られる宗教対立
ジャカルタは来年2月に予定される州知事選の真っただ中で、現職のバスキ知事が「イスラム教の聖典コーランを侮辱した」として過激なイスラム組織から糾弾され、大規模デモ、デモ隊一部の暴徒化など騒然とした状況にある。中華系インドネシア人でキリスト教徒であるバスキ知事に知事選で対抗馬を擁立している政党支持者や過激なイスラム教団体の執拗な糾弾でバスキ知事は「宗教冒涜罪」などの容疑者となり、13日にはその初公判が開かれている。
来年2月の投票前には裁判の判決が言い渡されるとみられているが、無罪判決なら過激なイスラム勢力が反発して大規模デモや治安当局との衝突も予想され、有罪判決ならバスキ知事を支持する与党勢力や学生・人権団体による抗議運動が起きるのは確実といわれている。
こうした首都ジャカルタの宗教対立を契機とする騒然とした情勢に乗じる形でテロ組織による爆弾テロ、自爆テロへの懸念は依然として存在しており、今後年末年始にかけて多くの市民が集まる場所や行事には特別な警戒が必要となっている。
トップ画像:ジャカルタ市内を行進するイスラム教徒らによるデモ隊 12月2日
©大塚智彦
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