トランプ勝利は露ハッキングの賜物? どこへ行く?アメリカ その6
Japan In-depth / 2016年12月16日 5時0分
大原ケイ(米国在住リテラリー・エージェント)
「アメリカ本音通信」
ワシントン・ポスト紙の報道によると、米中央情報局(CIA)は、明確に「ロシア政府がトランプを勝たせる目的でハッキングをした」との結論に至った。
大統領選挙中に、ハッキングされた民主党幹部のメールや、ヒラリー・クリントンが公表を拒否していたゴールドマンサックスでの講演内容や、主要アドバイザーの一人であるジョン・ポデスタの個人メールがウィキリークスを通じて流れたが、「デュークス」として知られるロシアのハッカー集団の形跡が認められたという。一方で、共和党幹部のコンピューターもハッキングされた形跡があったが、その内容は漏洩されなかった。
ドナルド・トランプは一連のハッキングについて「やったのがロシアかどうかわからない」「現場を取り押さえたわけではないので証拠がない」「どこぞのベッドに座ったデブがやったことかもしれない」と言い訳をしているが、次期大統領になった時点でCIAからはっきりとロシアの仕業だと聞いているはずだ。
米NBC局はさらに、ハッキングはプーチン大統領直々の命令でなされたことで、当初の目的は、クリミア侵攻に対する欧米の経済制裁措置への報復としてクリントンに不利な情報を流し、アメリカの政治が腐敗していることを示すことだったという。そしてさらには、アメリカに世界を率いていくリーダーの資格がないことを知らしめようとした。そこで、対抗馬のトランプに勝たせよう、となったのだ。プーチンは、2011年のロシア議会選挙について、クリントンが厳しく批判したことを根に持っているようなのだ。
トランプは「ハッキングがロシア政府の仕業だと言っているのは主に民主党のやつらで、ひどい負け方をしたからだ」と主張しているが、なぜここまでプーチンの肩を持つのか。少なくとも2大政党に囚われない中立の立場の調査委員会を作ろうという声が共和党内部からも上がっている。
さらには、トランプは石油会社エクソンのCEO、レックス・ティラーソンを国務長官に指名する予定だ。ティラーソンは南シナ海でベトナム政府と協力して海底油田の開発に携わった経験を持つが、同時にアラスカでもロシアと提携して油田開発をしようとしていた。そこにアメリカによるクリミア侵攻への制裁措置として、その計画そのものが頓挫したという因縁がある。ティラーソンが国務長官となれば、早速にも油田開発に再びゴーサインが出てもおかしくない。彼はロシア政府から、外国人に授与される最高の勲章を叙勲した唯一のアメリカ人だ。
CIAがロシアのハッキングを防止できていたら選挙の票そのものが変わっていたかどうか、今となってはわからない。投票数そのものが操作されたという証拠は今のところ何もない。だが多くの専門家は、ジェームズ・コミーCIA長官が投票日間近になって、クリントンのスタッフのメールが見つかったというだけで、それを米議会を通して発表したことがクリントン敗北を決定づけたと見ている。
12月19日には選挙人が各州の結果を受けて投票し、トランプが次期大統領に正式決定する予定だが、選挙人の中には、投票の前にロシア政府からのサイバー攻撃がどのぐらいの影響を持つものなのか、直接CIAから話を聞きたいという者も出始めている。
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