テロよりトランプ氏を危険視する朝日新聞
Japan In-depth / 2016年12月24日 14時14分
古森義久(ジャーナリスト・国際教養大学 客員教授)
「古森義久の内外透視」
ドイツの首都ベルリンでの12月19日の大量殺傷事件はまたイスラム過激派によるテロ攻撃だった。イスラム・テロ組織のIS(イスラム国家)系が犯行声明を出したのだ。だがこの事件を報じる朝日新聞は奇妙にも、むしろ非難の矛先をテロ組織よりもアメリカのドナルド・トランプ次期大統領に向けるのだ。
ベルリンでは大型トラックがクリスマス行事でにぎわう群衆のなかに突入した。第一報では男女の市民ら19人が死に、48人が負傷した。明らかに故意の突入だった。ドイツのメルケル首相らもテロ事件だと断じて対抗措置を取り始めた。
ところが朝日新聞は12月20日夕刊では、テロ自体よりもアメリカの大統領選挙で当選したトランプ次期大統領が事実関係のまだ不明の段階でこの事件の犯行はイスラム派テロリストだと断じたのはけしからんとする記事を掲載した。この記事は次のような見出しだった。
「独の突入『イスラムのテロリスト』」「トランプ氏 根拠なく非難」
記事の前文と冒頭は以下のようだった。
「ベルリンのクリスマス市のトラック突入事件について、トランプ次期米大統領は、運転手の素性などが分かっていない段階にもかかわらず、過激派組織『イスラム国』(IS)と関連付けて非難した」
「トランプ氏は声明で、『ISや他のイスラム主義テロリストは、絶えずキリスト教徒を虐殺している』などと根拠なく断定した。さらに『これらのテロリストや世界のネットワークは、地球上から根絶されなければならない。自由を愛するパートナー国と我々は、この任務を遂行していく』と主張した」
朝日新聞はトランプ氏がベルリンでの事件をイスラムのテロだと断定しても、推定しても、けしからんと主張しているのだ。決定的な証拠がなければ、そんな決めつけをするなとして、非難の矛先はテロリストよりも、もっぱらトランプ氏に向けているのである。
だがこの大型トラックを人間の集まる場所に突入させるというテロ方式は今年7月にフランスのニースで起きた事件と同じだった。ニースでの犯行はイスラム過激派のテロ集団だった。トランプ氏の発言も犯人を100パーセント、ISだと決めつけているわけではなかった。この種のテロはこれまではイスラム過激派のキリスト教徒への犯行だと述べているだけの範囲だったといえる。だがそれでも朝日新聞はトランプ氏が今回のテロをイスラム過激派と結びつけることはけしからんと批判するのだった。
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