福島県双葉郡、医療崩壊の危機
Japan In-depth / 2017年1月11日 7時0分
しかも、この病院は最大5年で閉鎖される。双葉郡の避難指示が解除されると、双葉郡内の県立病院が再開されるからだ。高野病院へはカネは出せないが、県立病院には湯水のようにカネを使う。福島県関係者は「人が住んでいないところに、急性期病院を建てて、どれくらい役にたつかわかりませんが、もう後戻りはできません」という。
なぜ、こんなことになるのだろうか。理由は二つあると思う。
一つは、福島県の医育機関が県立医大であることだ。
我が国の医療行政は、政府が方針を示し、予算を都道府県に分配する。そして、都道府県が基礎自治体に分配する形で行われる。医療行政とは畢竟、医師の手配とカネの分配だ。通常、医師の手配は国立や私立大学、カネの配分は県庁が握る。ところが、福島県では、両者を県が握っている。このような体制では、県が暴走したら、誰も止められない。
むしろ、県職員の間では評価される可能性が高い。政府から福島県に分配された予算は、出来るだけ県の直轄事業にした方が、ポストや権限も増やせるからだ。退職後の天下りも容易になるし、ハコモノを作って雇用を維持し、選挙に再選したいという政治家の思惑も絡んでくるだろう。
実は、我が国で県立医大しか存在しない都道府県は、福島以外には和歌山、奈良しかない。政令指定市と含めても、横浜市と横浜市大があるくらいだ。このような地域では、さまざまな問題が生じている。
昨年、和歌山県立医大では、教授会が反対する中、県庁主導で薬学部の新設が決まった。薬学部校舎を新築するらしい。2011年には、横浜市大医学部長が、「理事長に対する背信行為及び法人に対する信用失墜」という理由で解任された。理事長は横浜市役所OBだった。自治を重んじる大学ではあり得ない出来事に、全国医学部長病院長会議が、「人事裁量権の逸脱」と批判した。
このような自治体では、県庁が暴走したら、誰も止めることができない。メディアも、太鼓持ちのような記事を書く。それが前述した福島県の地元紙の対応だ。
薬害肝炎問題などで有名なフリージャーナリストの岩澤倫彦氏は、自らのフェースブックで、地元紙の報道に対して、以下のように述べている。
(以下、引用)
地元紙の福島民友はこう書いている。
「県が民間病院を個別に支援するのは異例」
高野病院に対して、上から目線の礼節を欠いた文章だ。
こんな下らない情報を自慢げに記者クラブに吹き込んだ福島県、そして安易に受け売りした記者には「恥を知れ」と言いたい。
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