【大予測:自動車業界】トランプ氏のツイートで激震 その2
Japan In-depth / 2017年1月12日 23時44分
遠藤功治(株式会社SBI証券)
「遠藤功治のオートモーティブ・フォーカス」
■トランプ氏の“トランプ遊び”
当たり前の話ですが、トランプ氏は次期米国大統領ですが、1月20日までは、まだ正式な大統領ではありません。また、公の場所で、NAFTA等につき新政権の通商政策を発表した訳でもありません。現状では、1個人がTwitterで“つぶやいた”だけの話です。それでも既に、FORD、GM、トヨタ自動車と次々に餌食となり、FORDに至っては、16億ドルの工場建設計画を白紙撤回する、という事態になっています。いくら次の大統領に決まっているからといって、その正式就任前に、つぶやきながら実際の政治行動に結び付けているのは前例がありません。
まだトランプ氏に名指しはされていませんが、日産自動車とマツダの経営陣は、正直戦々恐々でしょう。実際、米国がNAFTAから脱退する、ないしはメキシコ製自動車にBig Border Taxを課す、ということになれば、最もその影響を受けるのは、日産自動車とマツダだからです。そして、彼らを信じてついて来た、系列の自動車部品企業でしょう。メキシコには完成車メーカーのみならず、1,000社を超える日系企業が終結、自動車部品のみならず、金属・機械・化学・繊維・電機・精密・物流各社が立地、現在もまだ、進出企業数は拡大中というのが現実。完成車メーカーの減産などという状況に陥れば、裾野が広い自動車では、関連産業に多大なる影響が出ることになります。
勿論、実際に上記のような政策を、正式に実行に移せるのかどうか、というのは大きな疑問です。今後、米国共和党内や議会での議論の中で、果たして大統領選最中の公約通りの政策が実現されるかは、甚だ疑問ではあります。実行されれば明らかなWTO違反でしょうし、相手国からの敵対行動発動など、現在の貿易体制は大きく揺らぎます。
ただ、WTO違反と言っても、その違反判定までには数年を要します。その間の米国での機会損失や、反トランプ(米国)的姿勢と捉えかねない米国民世論を前に、米国におけるビジネスチャンスを大きく損ねる可能性があります。トヨタ自動車の新工場が完成するのは、まだ2年後の2019年、とりあえずは様子見で、というのが従来のトヨタ自動車経営陣のスタンスだった筈です。他の自動車メーカーでも、根拠が無いと言えば無いのですが、それなりに楽観的なスタンスで、現実には何も起こらないであろうと、トランプ氏の政策を見ていた筈です。それが、今回のトヨタ自動車に対するtwitter攻撃で、雰囲気は完全に一転しました。
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