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少数民族問題でスー・チー氏窮地に

Japan In-depth / 2017年2月6日 23時0分

ラカイン州で昨年10月9日、バングラデシュとの国境に近い地域の警察施設など3か所が武装集団に襲撃され、警察官9人が死亡する事件が発生した。武装集団は正体不明だが、国軍はロヒンギャ族組織の犯行と一方的に決めつけてロヒンギャ族集落の掃討作戦を開始。

人権団体はこの作戦でロヒンギャ族住居は放火され、男性は虐殺、女性は暴行を受けるなどの深刻な人権侵害が続いているとの報告を公表。バングラデシュに避難したロヒンギャ族は2万人以上に達している。

人権団体は「現状は国軍によるロヒンギャ族への民族浄化状態」と国際社会に訴えている。コフィ・アナン元国連事務総長がロヒンギャ問題の特使としてミャンマー入りしたが、仏教徒の妨害などで実態調査が進まず、「民主化運動の指導者としてノーベル平和賞を受賞したスー・チーさん」への少数民族や国際社会の失望が広がっているのだ。

昨年12月末には南アフリカのツツ司教やパキスタン人のマララ・ユスフサイさんなどノーベル平和賞受賞者11人を含む、人権活動家ら23人が国連に対し、ロヒンギャ族問題への対策を怠っているとしてスー・チーさんを批判する書簡を国連に送り、同問題を国連安保理で協議するよう求める事態も起きた。

加えてイスラム教徒が多数を占めるASEANのマレーシアやインドネシアからも「同胞イスラム教徒の人権侵害への憂慮」が示され、ASEAN会議などでミャンマーが「国内問題である」「人権には配慮している」など苦しい説明に追われる事態が続いている。

■どこへ向かう「戦う孔雀」

こうした内憂外患状態のスー・チー顧問をコーニー氏の今回の暗殺はさらに厳しい局面に追い込んだことは間違いなく、ASEAN外交筋は「コーニー氏ではなく、スー・チー顧問に反発する勢力が背後で暗躍した可能性がある」と指摘する。

スー・チー顧問がロヒンギャ問題をはじめとする少数民族問題で効果的な指導力を発揮できないのは、国軍と仏教勢力という2大支持基盤からの反発が、ようやく実現した民主政権の屋台骨を揺るがしかねないから、という極めて政治的な背景があるからだとされている。

「軍政を相手に戦う姿勢から、NLDの象徴でもあるファイティング・ピーコック(戦う孔雀)と称されたあのスー・チーさんはどこへ行ってしまったのか」という内外からの落胆の声、同じノーベル平和賞受賞者からの批判、ASEAN内部からの厳しい視線、そういったものをスー・チー顧問は「内心忸怩たる思い」で受け止めていることだろう。

国軍や仏教徒の支持をつなぎとめることで政権維持を続けるのか、それとも少数民族や貧困層など民主化の恩恵をいまだに受けていないミャンマーの人々に手を差し伸べる政策に覚悟を決めて踏み切るのか。ミャンマーのファイティング・ピーコックはどこへ行こうとしているのか、国際社会、ミャンマーの人々は固唾を飲んで見守っている。

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