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米メディア「脱真実」時代で暗中模索

Japan In-depth / 2017年2月10日 11時5分

もともとアメリカのジャーナリズム業界では「ファクト・チェック」を重視しており、ピューリッツァー賞をとった「ポリティファクト」のウェブサイトでは、トランプの発言に逐一「嘘メーター(TRUTH-O-METER)」をつけて「だいたい事実」「ほとんど間違い」などと表示しているが、目立つのは「パンツ・オン・ファイヤ(Pant on Fire!)」。「尻に火がつく」と訳すと意味が通じない。これは「真っ赤なデタラメ」という意味だ。

何しろ「大統領が嘘をついた」を端的に言っても、本人が事実でないことを知っていて言っている確信犯的ウソなのか、それとも自分でもそれが事実なのだと信じて発言しているのかはマスコミにも判断できない。そこでニュース番組や記事では最近、同じ嘘という意味でも“Lie”ではなく“Falsehood”という言葉が頻繁に使われるようになった。

トランプ政権が使う「MO(modus operandi:常套手段・手口)」にも慣れてきたようだ。その手法とは、①まず、勝手なことを前触れなく突然やる。②それがバレて非難されたら「オバマ政権がやっていたことだ」と嘘をつく。③オバマ政権関係者が否定したら急遽撤回する。④だんまりを決め込む、というものだ。

散々物議を醸し出した、イスラム7カ国からの入国者前面禁止の大統領令がそうだ。最初は「この7カ国を対象として選んだのはオバマ政権だ」と言い訳をしたが、事実はかなり異なる。9-11以後、ビザ発給のための入国審査が追いつかず、「バックログ(Backlog :  未処理のまま放置されている業務)」が溜まりに溜まったので新しく発給するビザを滞らせてでも審査をきちんとやるために暫定的に6ヶ月ビザ支給を遅らせた、というのが真相だ。

サウジアラビアやトルコ、エジプトなど、イスラム教徒が多いのに禁止国に指定されなかったのはトランプと提携ビジネスがある国だから、というのも正しいが、これらの国からは弁護士や有料サービスを使ってビザやグリーンカードの発給が比較的早く、バックログが少なかった、という説明もできる。

もう一つの深刻な事態は、1月29日、イエメンにあるアル・カーイダの潜伏施設に海兵隊のエリート部隊シールズを投入しながらも、海兵隊と一般市民に死者を出してしまった奇襲攻撃の失敗だ。

これはそもそもオバマ政権時代に念密な攻撃計画が練られていたものだが、「新月の夜でないと実行は難しい」と保留になっていたものを、トランプが夕食をとりながら娘婿に指示を出してオーケーしてしまったといわれている事案だ。これも最初はオバマ政権時代の計画に非があったような言い訳をしているが、もしこんな失態をヒラリー・クリントンが犯していたら、と考えるとその後の対応があまりにも甘いと言えるだろう。

これほどまでに平然と嘘をつく大統領に対し、「ナルシスティック・パーソナリティ・ディスオーダー:Narcissistic Personality Disorder」つまり、「自己愛性人格障害」という精神障害があるのではという声も上がるようになってきている。あまりにも非現実的な展開の中で、立ち止まって考える間もなく日々の報道という対応を迫られているのが米マスコミなのだ。

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