金正男暗殺実行犯「アイシャ」を救え!
Japan In-depth / 2017年2月20日 19時5分
■暗殺当日に出国した北朝鮮人男性4人
一方でマレーシア捜査当局は女性2人の暗殺実行犯に犯行を指示した北朝鮮国籍の男性5人を事件容疑者として手配。うちまとめ役とみられる1人を17日にマレーシア市内で逮捕した。しかし残る4人はすでにマレーシアを出国しており、国際刑事警察機構を通じて行方を捜しているとしている。4人は北朝鮮の外交官旅券ではない通常旅券を所持し、暗殺実行当日にすでにマレーシアを出国したものの出国先について捜査当局は明らかにしていない。
この北朝鮮人男性5人(うち1人すでに逮捕)の中にアイシャ容疑者に接近して「日本のテレビ番組出演」を依頼した人物がいる、と捜査当局はみている。このほかに3人が事件に関与した疑いが濃厚としてマレーシア警察は行方を追っているがうち1人は北朝鮮国籍という。
■副大統領も「アイシャは犠牲者」
こうした事件の捜査の進展に伴い、インドネシア国内での報道合戦が激化、内外の報道陣が押しかけたジャカルタ西方約100キロにあるバンテン州セラン県パブアランのアイシャ容疑者の実家では母親や親族が質問に答えてアイシャ容疑者の人となりを話し、無実を訴え続けている。
新聞の論調も「アイシャは国際的陰謀の被害者」「インドネシア人のアイシャは無実、救済しよう」という同情的なものに変わりつつある。
報道の過熱を受けて17日にはユスフ・カラ副大統領が「事件後アイシャは(クアラルンプールの)空港付近で逮捕されたようで、逃走もしなかったことなどから(アイシャ自身が)特定国の工作員や暗殺犯ではないだろう。(アイシャは)殺害の実行犯だったとしても、特定工作員に利用された犠牲者とも言えるのではないか」との同情的な見方を示し、同情論が一気に高まっている。
■インドネシア人の対北朝鮮観に変化
インドネシアはスカルノ初代大統領時代から北朝鮮の金日成主席との間で友好関係を樹立、外交関係もありジャカルタ市内中心部メンテンには北朝鮮大使館が存在する。北朝鮮による日本人拉致事件の被害者、曽我ひとみさんが夫ジェンキンズ氏と再会を果たしたのもインドネシア・ジャカルタであり、今年1月23日のスカルノ大統領の長女、メガワティ・スカルノプトリ元大統領の誕生日にはメンテンのメガワティ私邸を北朝鮮大使が祝賀のために訪問している。
こうした友好関係からこれまで北朝鮮には比較的中立的な立場をとってきたインドネシアだが、近年はミサイル発射を批判したり、北朝鮮とのイベントをキャンセルしたり、北朝鮮レストランが閉店したりと様々な要因から「冷めた関係」に変化してきていたという。
そこに起きた今回の金正男氏暗殺事件へのインドネシア女性の関与は、インドネシア世論を一気に「反北朝鮮化」させており、「恐ろしい国」、「何をするかわからない国」との共通認識が国民の間に広がっている。そういう意味では「北朝鮮にとって友好国であり外交関係のある国」のインドネシアで北朝鮮の実態が周知され始めたことは、今回の暗殺事件思わぬ波及効果と言えるだろう。
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