「圧倒的に勝つ」アイスホッケー女子日本代表発進その1
Japan In-depth / 2017年3月3日 9時40分
神津伸子(ジャーナリスト・元産経新聞記者)
■褒める指揮官たち
まずはスタートラインに立った。
先月9日からの苫小牧での第23回オリンピック冬季競技大会女子アイスホッケー最終予選を全勝で、日本勢として韓国・平昌五輪出場第1号の名乗りを上げたスマイルジャパン。最終ドイツ戦で3−1での勝利後、歓喜と安堵の涙にむせんだ後、冷静に「これは、通過点に過ぎません。やっとスタートライン。狙うのは五輪メダル」主将・大澤ちほを始め、チーム全員がすでに前を見ていた。が、皆の鼻はしばらく赤いままだった―。
フランス(世界ランキング12位・3次予選通過国)、オーストリア(同11位)、ドイツ(同8位)、日本(同7位)で構成された予選グループD。連日気を抜けない戦いが続いた。一方のグループC、スイス(同6位)、チェコ(同9位)、デンマーク(同10位)、ノルウェー(同13位・3次予選通過国)からは、スイスが勝ち上がった。
2018年2月9日に始まる平昌五輪での戦いは、世界ランキング1~4位アメリカ、カナダ、フィランド、ロシアによるグループA,同5位のスウェーデン、予選通過国・日本、スイス、開催国・韓国の8ヵ国で繰り広げられる。
去年の4月の世界選手権トップディビジョン惨敗、ディビジョン1降格が決まった。7月からチーム立て直しを一任された監督、山中武司は対ドイツ五輪決戦後、「ありがとうしかない。大一番でベストゲームをやってくれて」山中は、滅多に褒めない。だが、対戦国の監督は敗戦後でも自分のチームを称える。ドイツのヒンターシュトッカー監督は、
「両方のチームにチャンスがあった。どちらも良くやった。日本の方がリズムがあった」フランスのタルル監督も「良い試合だった。1−2から追いついたら、流れは変わっていた。良くやった選手たちを誇りに思う」欧米の指揮官は、褒めて伸ばすのだ。
■初めて使った奥の手
最大のピンチはいきなりやって来た。スマイルジャパンの初戦、オーストリア戦1ピリオドは最悪の出だしだった。足は止まり、守勢になり、緊張感がほぐれない、心と身体がバラバラだ。ゴーリーの藤本那菜は、自分は冷静さを保ちながらも、「皆が、いつもと全然違う」自陣ゴール前で感じ取っていた。氷上のスナイパー、絶対エースの久保英恵が開始17分過ぎにやっと先制ゴールを決めたものの、1ピリ終了間際残り30秒で同点に追いつかれてしまう、実にいやな展開だった。
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